学校給食の「完食賞」プレッシャーに? 栄町、取材で一転廃止 識者も「楽しく食べて」 【ちば特 千葉日報特報部】 

栄町の小中学校でクラス単位で完食した際に贈られる完食賞のサンプル(町教委提供)
栄町の小中学校でクラス単位で完食した際に贈られる完食賞のサンプル(町教委提供)
情報提供をした保護者が子どもに野菜を食べてもらおうと作ったレンコンチップス(保護者提供)
情報提供をした保護者が子どもに野菜を食べてもらおうと作ったレンコンチップス(保護者提供)

 子どもたちのバランスの取れた食生活に欠かせない学校給食。しかし、「クラス全員が食べきるともらえる“完食賞”があり、子どもたちのプレッシャーになっていないか心配」との保護者の声が双方向型調査企画「ちば特(千葉日報特報部)」に寄せられた。当該教育委員会にこうした懸念を伝えると一転、4月からの取りやめが決まった。不安は拭われる結果となったが、そもそも完食賞の実施は適切なのか。専門家や食事の場で苦労した経験者の意見を参考に給食の在り方を考えた。(「ちば特」取材班 渡辺翔太)

 情報提供してくれたのは栄町で2人の子どもを育てる保護者。上の子は好き嫌いがないが、下の子は咀嚼(そしゃく)する力が未発達で、繊維のある野菜やステーキをかみ切れないという。

 「給食を理由に学校嫌いになってほしくない」。保護者は、好物のフライドポテトをヒントにレンコンチップスを作るなどわが子の苦手克服のため手間と工夫を惜しまない。

 それでも「完食賞」は正直不安だ。知人の子が「牛乳で苦手な料理を流し込むことがある」と聞き驚いた。「自分のせいでクラスが完食賞がもらえないとプレッシャーに感じる子もいるのでは」と他の子どもの気持ちもおもんぱかる。

◆配慮した指導

 同町では、食べ残しを減らそうと子どもたち自身に献立を考案させるなど食育に力を入れている。そんな中、完食賞は約5年前、当時の栄養教諭の提案で小中学校に導入された。クラス全員が給食を食べきると賞状が贈られ、教室に掲示するなどしている。

 もちろん、子どもには体格差もあり、その実施は各校の判断に委ねられている。実際、町内の小学校4校のうち1校は採用せず、採用している学校でも「賞を目指すことにこだわった指導は控えている」と町教委。

 ただ今回、取材を通じて保護者の不安を伝えると、町教委は「配慮してきたつもりだが、心配する声が届いたので検討が必要」と回答。翌日「さまざまな課題などから次年度は実施しない」と明らかにした。

◆無理に食べない

 「大人がたくさん食べてほしいと思うのは健康を願ってのことで悪気はない。ただ、小食や苦手が多い子にとってはプレッシャーとなる」。そう指摘するのは、給食指導に関してウェブ上で発信する「きゅうけん」編集長の山口健太さん。

 自身は高校の部活動で「白米1日7合」のノルマを課され、達成できないと指導者に叱られた苦い経験をもつ。以来、会食時に不安を覚え、喉が動かなくなる「会食恐怖症」に悩んだ。山口さんは「『無理に食べなくて良いからね』と言われる方がかえって安心して食べられる」と発信し続けている。

◆本末転倒と警鐘

 栄養教育・指導などが専門の淑徳大学(千葉市中央区)看護栄養学部の大山珠美教授は「給食は楽しく食べることが一番。それが失われては本末転倒」と警鐘。現在はコロナ禍でできないが、「机をつなげて楽しく食事をすることやマナーを学ぶ機会でもある」と話す。

 その上で、完食賞については「栄養バランスの面からできるだけ残さないのは好ましいが、『完食』という言葉には無理にでも食べるというイメージも含む」と指摘する。

 完食賞が廃止されることを知った情報提供者の保護者は「ほっとした。町にも感謝している。ゆっくりでいい。楽しく食事できるようにしてあげたい」と話す一方で、「わがままばかりで好き嫌いをしているのではないと知ってほしい」と訴えた。


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