全員マスクの重要性 新型コロナウイルス感染症との戦い1 新規感染を減らす施策/デルタ株の実態 東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科教授・寺嶋毅 【医療現場からコロナ禍の羅針盤 情報提供とアドバイス】(4)

 新型コロナウイルスによる感染症をCOVID-19といい、ウイルスの名称はSARS-CoV-2です。エンベロープとよばれる膜の内部に設計図であるRNAがあり、膜の表面から突き出ているSタンパクが細胞の受容体に接着して感染します。

 エンベロープはアルコールによって壊れます。ウイルスは細胞内で自身のRNAと構成するタンパク質を複製、大量生産します。複製する過程で、ミスコピーのような遺伝情報の置き換わりが起きて、タンパク質を構成するアミノ酸が変わることがあります。感染しやすさ、重症化しやすさ、ワクチンの効果に影響を与える変異株は懸念株に指定されています。

 わが国では武漢株から欧米株、アルファ株、デルタ株に置き換わるたびに、感染者増加の波があり、基本再生産数(感染対策がない状態で1人の感染者から何人に感染するか)も増加しています。欧米株に比較してアルファ株は1・4~1・9倍、デルタ株ではさらに1・6倍と報告されており、米国の疾病予防管理センターはデルタ株の基本再生産数は6~9であると発表しています。

 COVID-19の主な感染経路は接触・飛沫感染ですが、それでは説明のつかない事例、レストランやバスでのクラスターなどが報告され、エアロゾルによる感染拡大も無視できないと考えられます。接種感染予防には消毒、飛沫(5μm(=千分の5ミリメートル)以上の粒子)を遮断するためにはマスクが有効です。素材と密着度が重要で、不織布マスクを密着させて着用することが勧められます。

 飛沫の大部分は2メートル以内に落下しますが、それよりも小さな粒子が空中を浮遊し、吸い込んで感染する経路がエアロゾル感染です。マスクは微小な粒子に対しても、全てではありませんが、吸い込む量を減らすことには有効と考えられます。また、浮遊しているウイルスを薄める、排出させるために換気が重要です。デルタ株の猛威をみると、30分に1回、あるいはさらに頻回な換気が勧められます。マスク着用は感染者がはき出すウイルス量を減らすことにも極めて有効です。

 無症状の人からいつの間にか感染して、誰もが周囲に感染を広げてしまう可能性があります。多くの人が集まる場所、教室や職場など長時間滞在する場所ではより注意が必要です。デルタ株の登場により家庭内感染が増えている状況をみると、居間や共有スペースでのマスク着用も勧められます。全員がマスクをすること(ユニバーサルマスキング)が重要であり、自分を守る(感染しない)ことが、さらに周囲を守る(感染を広げない)ことにつながります。

 ワクチンは発症、重症化のみならず感染の予防など優れた効果が示されています。ワクチン接種は自分が感染しない、その延長として身近な人に感染を広げないことにつながります。一方で、変異株の出現や接種から時間が経過するにつれて、接種後にみられる感染(ブレイクスルー感染)も少しずつ増えてきました。ワクチンのみでは完ぺきではありません。しばらくはワクチンと感染対策の両輪で臨むことが大切です。


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