要塞島「海堡」観光資源に 富津岬の遺構含め模索 富津市 7日に講演会、復元画も

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富津岬から望む第一海堡(右)と第二海堡=富津市
富津岬から望む第一海堡(右)と第二海堡=富津市
富津岬の沖合に浮かぶ第一海堡(富津市提供)
富津岬の沖合に浮かぶ第一海堡(富津市提供)
海堡と富津試験場の復元画を持つ小坂さん(左)と森田さん=富津市
海堡と富津試験場の復元画を持つ小坂さん(左)と森田さん=富津市

 富津岬の沖合に浮かぶ人工要塞(ようさい)島「海堡」を観光資源に利用する動きが加速している。初となる第二海堡への上陸ツアーが11月まで実施されるほか、地元の市民団体は要塞の復元画を作成。富津市は、富津岬に残る戦争遺構を含めた活用を模索し7日に講演会を開催する。明治から大正期に造られた近代遺産に、再び注目が集まりつつある。

(かずさ支局・武内博志)

 海堡は、首都防衛のため東京湾入口の3カ所に造られた人工島。富津岬の沖合約1・5キロにある第一海堡と、その約2・5キロ西の第二海堡が現存する。いずれも地籍は富津市で、通常は立ち入り禁止となっている。

◆先進の横須賀と連携

 このうち、国土交通省が管理する第二海堡への上陸ツアーは、公的施設を観光資源に生かす施策の一環として、試験的に始まった。国や関係機関で構成する第二海堡上陸ツーリズム推進協議会が実施会社を公募し、名乗りを上げた5社が8~11月に計30のツアーを予定する。海況不順で上陸できないケースも多いが、これまでのところ客足は好調で、同協議会は2019年度中の定期就航を目指している。

 コースは各社によって異なるが、船の発着場所を横須賀市とし、砲台跡がある猿島や記念艦「三笠」といった横須賀の戦争遺産を合わせて巡る内容が多い。同市では、軍港クルーズを民間会社が就航するなどツアーの下地があり、同市は第二海堡を組み込んだ周遊ルート創出に力を入れる。富津市内の飲食店で提供される海堡丼に倣い、「横須賀海堡丼」の販売も9月15日から始めた。

 横須賀市の担当者は「かつては横須賀と富津を結ぶ航路があり、人と物の行き来があった。第二海堡をきっかけに交流が復活すれば」と、富津と協力した取り組みに意欲を見せる。

◆地元も機運捉え活動

 海堡が所在する地元の富津市では、既存クルーズ船の就航がないため、富津発着のツアーに難しさがつきまとう。それでも、はとバスが10月19日に組むツアーで立ち寄りが決定した。東京駅をバスで出発し、同市内の飲食店で海堡丼を食べて公共埠頭(ふとう)から出港。第二海堡に上陸後、横須賀に向かう予定だ(すでに満席)。

 富津市商工観光課は「定期就航する時には富津も組み込んでもらいたい。不可能ではない」と誘致に力を入れる。

 同市は機運を高めようと、7日午後2時から、海堡の歴史や現状を紹介する無料の講演会を市役所で開催する(定員150人。申し込み不要)。富津岬には、旧陸軍の秘密研究所「富津試験場」の遺構が点在しており、市は、海堡を始めとした「東京湾要塞」として市民に周知し、文化・観光振興につなげる考えだ。

 会場では、地元の任意団体「東京湾海堡ファンクラブ」が作った海堡と富津試験場の復元画を配布する。同クラブの森田裕子さん(52)が、戦中の勤務経験者の話などを基に昨年9月から約1年かけて完成させた力作で、富津公民館や市商工観光課でも入手できる。

 講演会の講師の一人として海堡と富津の関係をひもとく同クラブの小坂一夫会長(71)は「これを機会に、より富津に近い第一海堡も安全性を確保して立ち入れるようにしてほしい」と要望。防災訓練などに使われ護岸が整備されている第二海堡とは異なり、老朽化が進み船も接岸できない第一海堡の保存・活用を訴えている。

◇海堡(かいほう) 旧日本陸軍の基礎を築いた山県有朋も構想に関わった人工要塞島。第一海堡は1890年、第二海堡は1914年に完成した。第一海堡は財務省が管理し、かつて干潮時に歩いて渡ることができた。