ユーモアで難局乗り切れ 銚子電鉄「まずい棒」販売 経営改善「頼みの綱」に 【ちば最前線 銚子海匝支局長・田村理】

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銚子電鉄が販売するまずい棒=銚子市の「ぬれ煎餅駅」
銚子電鉄が販売するまずい棒=銚子市の「ぬれ煎餅駅」

 多くの人々に支えられ、廃線の危機を乗り越えてきた銚子電鉄(銚子市)。経営難を逆手に取って名付けたユニークなスナック菓子「まずい棒」(1本50円、15本セット600円)が、販売開始からわずか2日間で初回入荷分1万5千本を完売するほど人気を集めている。依然として厳しい経営状況が続く中、「ぬれ煎餅」に続く新たな救世主となるか、注目が集まる。
 
 まずい棒は、同電鉄が運行する「お化け屋敷電車」の企画・演出を担当する怪談収集家、寺井広樹さんが考案した。「経営状態が『まずい』ことに掛けた」というアイデアに、竹本勝紀社長は「それは面白い」と食い付いた。

 パッケージのキャラクターは漫画家、日野日出志さんが描画。サクサクとした食感で、味自体は“美味”だ。

 逆境を逆手に取った斬新な発想から、さまざまな媒体で取り上げられ人々の関心を呼んだ。「ハサンイヤイヤ」に掛けて、8月3日午後6(18)時18分から犬吠駅で販売を開始。大勢の人が詰め掛けて30分で約5千本が売れた上、翌日の午前中には初回入荷分を売り切った。その後も同月中に3回、2400~7千本ずつ入荷し駅と直売所に並べたが、いずれも即日完売した。

 増産分15万本を用意し、7日から販売を再開する。1日からネット販売の予約を開始したが、ネット販売以外は駅と直売所のみで取り扱う方針。これには市内への誘客につなげる狙いもあるという。

 まずい棒には、経営改善の役割が期待されている。
 
 同電鉄では昨年度、定期外運賃収入の減少などが響き、鉄道事業で1億円以上の損失が生じた。副業部門では倒産危機を救ったことで知られる「ぬれ煎餅」の販売などで5千万円近い利益を得たが、最終損失は3482万円となった。

 さらに、本年度からは車両検査に対する国県市の協調補助が受けられない見込みとなっている。現行ダイヤを維持するために不可欠な検査の実施に向け、市は5月中旬から8月末まで、ふるさと納税ポータルサイトを通じ1千万円を目標にネットで小口資金を集めるクラウドファンディングを実施したが、寄付金は200万円以下にとどまった。市は協調補助で負担予定だった250万円分も独自に補助するか検討中。こうした中、新たな収入源のまずい棒は、不足分を補う「頼みの綱」となっている。

 竹本社長は「批判も覚悟で『面白い鉄道』という方向にかじを切り、度肝を抜く企画を打ち出してきた」と力を込める。ミステリースタンプラリーやサバのまちをPRする3843(サバヨミ)号の運行など独自の企画で集客に取り組んできた。背景にあるのは「鉄道がないとまちは寂れてしまう」という危機感だ。

 銚子市では東日本大震災の風評被害で観光客が減少し、その後も低迷。今年1月末で民間水族館「犬吠埼マリンパーク」が閉館するなど、観光産業は逆風にさらされている。市中心街から犬吠埼周辺、漁師町の風情が残る外川町をつなぐ全長6・4キロのローカル線の果たす役割は大きい。

 「『このまちにあって良かった』と思ってもらえる鉄道にしていきたい」(竹本社長)。同電鉄は、県立銚子商業高校の生徒たちによる駅舎の美化活動など多くの善意に支えられてきた。事業の継続には、市民や協力者に愛される鉄道であり続けることが重要だ。一方で、楽しみながら協力できる仕掛けを作ることは、息の長い支援につながる。ユーモアあふれる取り組みで、難局を乗り切ることを期待したい。