人々奮い立たせる雄姿 度重なる試練乗り越える銚子電鉄 【ふさの国探宝】

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犬吠埼灯台(左奥)を望むキャベツ畑の中を走る銚子電鉄の車両=銚子市
銚子電鉄の支援に携わった県立銚子商業高校の卒業生。銚子市内で催されたイベントで同社のぬれ煎餅を販売した=3月18日
店内や商品を紹介する小林さん=銚子市外川町のカフェ&ギャラリー「ゆうせい丸」

 収穫量日本一の春キャベツの畑が広がる中、銚子電鉄(銚子市)が昔ながらの車両で最高時速40キロでひたむきに走り続ける。度重なる試練を市民や高校生らの支えを受け乗り越えてきた。その七転び八起きの姿は、ネーミングライツ(命名権)パートナーに名付けられた銚子駅の愛称「絶対にあきらめない」に通じるものがあり、人々を奮い立たせてくれるかのようだ。
 
 全長わずか6・4キロのローカル線。電車はJR東日本の銚子駅とつながったホームを出発する。ヤマサ醤油の工場を横切り、木々が茂る勾配を上がって住宅地を抜けると、笠上黒生駅辺りから収穫真っ盛りの春キャベツの畑を車窓から見られるエリアに。のどかな風景を楽しみながら関東最東端の海鹿島駅や犬吠埼灯台の最寄り駅・犬吠駅を過ぎれば、間もなく終点の外川駅に到着する。
  
 1913年に地元有志が設立した「銚子遊覧鉄道」が母体となる。数年で廃線となったが、その後設立された銚子鉄道が跡地を活用し、23年に営業を始めた。48年には銚子電気鉄道に社名変更。銚電(ちょうでん)の愛称で親しまれている。

 開業から95年。さまざまな困難に直面してきた。第2次世界大戦中は空襲で車庫が被災。98年は連鎖倒産の危機に陥った。2004年には当時の社長の債務を会社が肩代わりすることになり、06年に再び倒産に追い込まれかねない事態になった。利用者は昭和40年代ごろ、年150万人ほどいた。しかし、自動車の普及、人口減少、東日本大震災後の観光客減の影響で、15年度は年約40万人にとどまった。

 会社を救ったのが副業で製造する菓子「ぬれ煎餅」による収入だ。

 06年のピンチの際は「電車修理代を稼がなくちゃいけないんです」と必死の呼び掛けを公式サイトに掲載。これに呼応した支援の輪が生まれ、ぬれ煎餅の注文が全国から殺到。運行維持につながった。

 その後も、地元の県立銚子商業高校の生徒たちがサポート役を担った。脱線した車両の修理代、老朽化した駅舎の修繕代を、インターネットで小口資金を調達するクラウドファンディングで集めた。駅舎をきれいにする作業にも携わった。

 同社は駅名愛称の募集やイベント列車の運行など、経営改善に向けた事業に取り組んでいる。

 「地域のみなさんや鉄道ファンなど、たくさんの方々に支えられてきた」と語る竹本勝紀社長。「依然として厳しい経営状況が続いているが、『この町にあって良かった』と思ってもらえる鉄道にしていきたい」と思いを新たにした。

◇文・写真  銚子・海匝支局田村 理

◇一口メモ 沿線に新スポットも

 関東平野最東端の岬に位置する犬吠埼灯台(犬吠駅徒歩7分)、周囲が一望できる「地球の丸く見える丘展望館」(同駅徒歩15分)など、沿線には魅力的なスポットがそろっている。

 漁師町の風情が残る外川町の玄関口・外川駅周辺には昨年11月、船宿跡を使ったカフェ&ギャラリー「ゆうせい丸」が誕生した。漁師の晴れ着「万祝(まいわい)」や銚子ゆかりの人物による絵画などを展示。大漁旗を使ったグッズも販売している。店長の小林実貴さん(33)は「まちあるきの休憩場所として利用してほしい」と呼び掛けた。

 同駅徒歩7分。午前10時~午後4時。木曜定休。問い合わせは同店(電話)0479(21)3888。