2010年9月8日 12:23 | 有料記事
台所の明り取りの窓枠に夕顔が絡みついている。葉ばかりで花芽はひとつもない。夏のあまりの暑さに怖気づき、花も咲く術を忘れてしまったのか。去年も、夕顔は忘れた頃に咲いた。白い光を放つ花で、まるで新品の絹の日傘のよう。畳み皺を残したまま闇の中で芳香を放ち、開ききった自分の姿に戸惑っていた。
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台所の明り取りの窓枠に夕顔が絡みついている。葉ばかりで花芽はひとつもない。夏のあまりの暑さに怖気づき、花も咲く術を忘れてしまったのか。去年も、夕顔は忘れた頃に咲いた。白い光を放つ花で、まるで新品の絹の日傘のよう。畳み皺を残したまま闇の中で芳香を放ち、開ききった自分の姿に戸惑っていた。