黒部市美術館訪問

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 目の前をシャーッといって走り去る「成田エクスプレス」を、私は何度も目にしている。

 乗ってみたい、と誘惑されるほどでもなかったが、一瞬の赤と黒の光明は頭にインプットされていた。

 「豪華な展覧会に行くのですから、豪華な列車に乗りましょう」

  というグループの提案で「成田エクスプレス」に乗った。といっても千葉駅~東京駅区間で、乗ったら着いてしまった。缶ビールを飲むひまもなかった。

 一両中の座席の向きが、進行方向と反対方向に二分されていて、グループが向かい合えるようにとガタガタやっていたら、車掌がやってきて、この列車の椅子は回転しません、と言った。

 東京駅でゆっくりと乗り換えの時間をとり、上越新幹線「とき」に乗った。指定席だった。

 医師から止められているビールを、移り行く車窓の景観が取り成してくれて……。

 途中の水田に穂波は見られなかったが、黒部の里では、頭を垂れ稲穂が八月末の秋風に揺れていた。富山県東北市の水田だけ何故?

 名代の「金太郎温泉」に着くと、皆は早々に岩風呂やサウナに出かけたが、入浴しない私は留守番だ。

 小一時間掛けて風呂客が戻ると、間もなく担当のおねえさんが夕食の支度にやってきた。沖縄出身だというおねえさんの仕事の手早さ、そして巧まざるユーモアに部屋の空気が和む。

 私の体調を気にして、座が酌をしぶるので、おねえさんに向かってグラスをさし出すと、すぐに「マイドーです」と言って注いでくれた。

 私はこの「マイドー」を「毎度」と聞き違えたが、本当は「前堂菊枝さん」という彼女の名前だそうだ。

 食後は「風の盆」というステージがあると聞き、皆で出掛けた。...