松本まりの「柄」

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 松本まりさんは自前の「言語」(詞)と「柄」を持った俳人である。

  木更津市畑沢公民館サークル句集「はたざわ」より、まりさんの「柄」を読む。(未熟な私用に注釈を付けてもらう)

   林住期しのぶ恋して夏に入る

  注釈=林住期とは五十歳~七十五歳を指して言う。(林住期後半の私も恋ができるのかな)

   ぼうたんの甘美なもので美しい

  注釈=「ぼうたん」は釈迦最期の言葉で、この世の甘美をいう。

   墓に居ずどこにいますの白芍薬

  注釈=“千の風”に乗ってフラフラしていては困りますよ、ご先祖様。

   穴まどい殺し文句を擦り抜けて

  注釈=穴まどいは冬眠前の蛇のこと。(いつまでも浮かれて“青春遊び”などしていてはいけませんよ、娘さん! といった意味もあるかな?)

   こくら魚町さぬき紙町夏はじめ

  注釈=小倉魚町はまりさんの出身地、讃岐は夫の本籍地。(夏を迎える妻と夫の町の地名句。おのろけの第一章。まりさんは“アクチブ美人”として有名だが、お写真で見るご主人もスポーティーな美男子だった)

  注釈の付かない佳句もある。

   身の脂抜けるまで咲く栗の花

  黄白色の雄花穂は、茶褐色に変色しても散らない。生命のしぶとさと、また季節(万象)の変移を提示する。俗に栗の花は「精の匂い」ともいわれ、生命に同化する。

   鳥わたるどこかに日傘忘れけり

  ふと秋を知る。藤原敏行の、「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」の歌を想起する。

   去りがたし観音堂の春うらら

  この句の情感は私も体感している。例年四月八日、木更津市上烏田「法眼寺」の「灌仏会」を詠んだ句。住職の読経の声音が春うららに溶け込んで、そのまま安住したい心地がする。

  ご住持の加藤典子さんは、松本まりさんや私らといっしょに、古典に遊ぶ富津「小泉万葉亭」同人だった。

  年の功で、間に合わせの講師だった私は、一夜漬けの講義が専らだったが、十数人の生徒方の方が「万葉集」「徒然草」に精通していた。

  特にまりさんは頭がいいというのか、勉強しているというのか、何でも私の上を行ったが、私の「感覚言語」はおもしろがってくれた。...