『大正・昭和期の地方政治と社会~千葉県政の展開と社会運動の諸相~』(池田宏樹著)

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 房総の近現代史研究をリードする一人、池田宏樹氏(千葉経済大名誉教授)が、新著を出版した。研究書形式ながらも、記述は平易で新聞資料を中心に未知の事実を掘り起こす。

 まず第1次大戦末期の15代から、27代までの千葉県知事の県政を5期に区分し、その特色と政友党・民政党の動向を丹念に追う。次に大正・昭和の戦前期の農民、借地借家人などの諸階層の運動を明らかにし、社会運動の発展と特定政党支持の矛盾を究明する。

 最終章の戦前期の女性の動向で、大正デモクラシー期以来獲得の諸権利が戦時体制の深化で後退する。だが、戦時体制は女性の動員なくしては成立せず、女性を動員するほど地位との矛盾が露呈し、女性の権利意識を高めたとする。珠玉の提起が随所に見られ、「新たな戦前」を思わせる当節、推奨の好著である。

 (彩流社=東京都千代田区富士見2の2の2・4320円)

 (房総地域史研究者・筑紫敏夫)