技術職足りず… 千葉県、採用増へ本腰 奨学金一部を代理返済 民間に対抗「早期枠」も

技術系県職員の採用枠に対する充足率
技術系県職員の採用枠に対する充足率

 千葉県が本年度から、不足している技術系職種の職員採用に本腰を入れている。これから入庁する職員の奨学金の一部を、県が代わりに返済する制度を始め、民間企業の採用早期化を受けて県の試験にも「早期枠」を新設した。技術系職員にはインフラの維持管理を担う土木職や、子どもたちの成長をサポートする児童福祉司、保育士など、県民の生活を支える仕事が多く含まれる。少子化の進展による若年人口の減少で採用競争が激化する中、学生へのアピールを強めている。

(中田大貴)

 「国や他の自治体、民間との競争で、技術系職種で必要な職員を確保できていない。県が本人に代わり返還することで、県庁を選ぶ後押しになれば」。熊谷俊人知事は10月30日の記者会見で奨学金の代理返済制度の開始を発表し、こう訴えかけた。

 県人事課によると、対象は土木系4職種と児童福祉系5職種に獣医師を加えた計10職種。日本学生支援機構の奨学金の返還総額のうち2分の1(上限150万円)を、県が本人に代わり入庁から10年間で分割して支払う。少なくとも2031年度まで実施する。

 同機構が21年から、自治体や企業が直接、採用者の奨学金を返済することを認めたことや、東京都が本年度から同様の支援制度を始めたことで導入を決めた。

◆職員確保、予定の半数

 制度新設の背景には、技術系職種の厳しい採用状況がある。

 24年度採用では、土木系は147人の枠に対し実際に入庁したのは73人だった。児童福祉系は185人に対し115人、獣医師が34人に対し12人で、10職種合計で予定の半分強しか職員を確保できなかった。25年度も8職種ですでに試験を実施したが、10月末時点で242人の枠に対し辞退者を除いた合格者は146人にとどまる。

 採用が予定に遠く届かない深刻な状況は、20年度から顕在化し始めた。19年度までは予定数の約8割を確保できていたが、20年度に6割台へ急落。22、23年度は4割台にまで下がった。

 県は要因について、国が児童相談所の職員配置基準を見直し、全国的に必要な児童福祉系の人員が増えたことや、建設需要の高まりで土木系職でも民間との採用競争が激しくなっているからだとみる。土木や建築分野では、大学などで専攻する学生数自体が減少していることも影響する。県は臨時職員の採用や業務効率化でしのいできたが、今後への影響も懸念されていた。

◆4職種で4月に試験

 対策は奨学金の返済支援にとどまらない。本年度から従来の6月に実施する試験に加え、技術系の土木や電気、児童指導員と一般行政職の4職種で、4月に行う早期枠も始めた。

 公務員試験対策が必要な「教養試験」をせず、民間企業で使われる「適性検査」を代用することで、民間志望の学生も受けやすくした。1年目の今年は4職種で計965人の応募があり、181人に合格を出した。

 民間企業では年々、採用が早期化している。リクルートグループの調査では、26年3月に卒業する大学生で25年5月時点に内定を得ているのは75・8%と、5年前から30ポイント近く上昇した。

 早期枠では、確保に苦戦する技術系3職種でも採用枠を上回る応募があった。同課の担当者は、早期枠が応募者の増加に「確実に効果があった」とし、「関係部署と協議の上で、職種の拡大も検討している」と手応えを語る。


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