【千葉魂】井口監督の使命 家族と過ごす時間の大切さ伝える

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公私を両立する米国の野球を知る井口監督。「仕事を大切にする気持ちは大事だし尊いものではあるけど、もっと大事なこともある」=3月、ZOZOマリン
公私を両立する米国の野球を知る井口監督。「仕事を大切にする気持ちは大事だし尊いものではあるけど、もっと大事なこともある」=3月、ZOZOマリン

 千葉に戻ってきて最初のミーティングで指揮官から飛び出した指示は意外なことだった。石垣島春季キャンプ、そして沖縄本島、高知、宮崎、名古屋での転戦を終え3月5日に約1カ月ぶりに本拠地ZOZOマリンスタジアムで練習を行った。グラウンドに集合した選手、スタッフにコーチを通じて指示をしたのは野球のことではなかった。卒業式の時期にあたる3月。もし子供たちの卒業式などがあれば遠慮なく相談をして、ぜひ出席をしてあげてほしいという内容だった。練習参加免除を行うなど可能な限りの配慮をするというのだ。

 「一生に一度のことだからね。できればその瞬間をしっかりと目に焼き付けてほしい。子供も親に来てほしいと思うだろうしね。だけど、選手やスタッフからは行きたくても、なかなか言い出すことはできないと思う。だからこちらから言いやすいように先に伝えようかと思った。昔はプロ野球選手というのは親の死に目にも会えないといわれていたけど今はそんな時代ではない」

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 指揮官は指示の意図をそう説明してくれた。思えば昨年も同様の方針を選手たちに伝えていた。プロ野球は華やかな世界に見えるが厳しい世界である。家族と過ごせる時間は限られている。1月は自主トレ。2月はキャンプでほぼ1カ月、家を空ける。ようやく戻ってきたと思ったら1日休んで、すぐに練習。そしてオープン戦が始まり長いシーズンである。そのチーム主導のスケジュールの中で家族や子供の行事に参加できることはなかなかない。そのつらさを誰よりも理解し現役時代にはメジャーで公私を両立させながらプレーをするアメリカの環境を見てきた指揮官だからこそ、あえて提言をした。

 「アメリカでは特別制度(出産の際、最大72時間の一時離脱ができる)もある。人生の節目は大事にしてほしい。仕事を大切にする気持ちは大事だし尊いものではあるけど、もっと大事なこともある。そういう場面を目にすることでモチベーションアップにもなる。生きがいになる」

 昨年もマイク・ボルシンガー投手の妻が日本で第1子の出産を控えている時は最大限の配慮を行いローテーションを組み、早く自宅に戻れるような練習メニューを設定した。結果、ボルシンガーは出産に立ち会うことができた。そしてこの環境を整えてくれた井口監督に深く感謝をし、その後も白星を伸ばした。もちろん、裏方という立場のスタッフにも奨励をした。

 「アメリカではいろいろなことを学んだ。練習をダラダラ長くすればよいというものではない。ナイターの翌日がデーゲームの時は練習を行わず、アップだけをしてあとは各自で体を動かして試合ということもある。雨の時とかもそう。最初は戸惑いがあったけど、日頃、しっかりと体をつくっていれば対応できるものだということを学んだ」

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 井口監督にとってチームを指揮して2年目のシーズンがまもなく開幕する。選手たちへのさまざまな心の配慮を行いながら効率的で無駄のないシステムを確立した組織づくりを心掛け、つくり上げていく。今までの日本野球にはなかった新しいスタンスと視点で、強豪がそろうパ・リーグの頂点を目指していく。日米両方の野球を知る男は、その使命に燃える。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)