EY調査、政府機関におけるAI導入に関する高い目標と実際の導入状況との間に大きな格差

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■回答者の64%がAI導入の重要性を認識

■AIを組織全体で導入しているのは26%

■約3分の2(62%)がデジタルソリューション導入の障壁としてデータのプライバシーとセキュリティ面の課題を挙げる

 

政府機関の上級幹部約500人を対象としたEYの最新調査から、政府機関とパブリックセクターはデータと人工知能(AI)が果たす重要な役割を認識している一方で、その導入状況には依然として大きな格差が存在することが明らかになりました。

 

回答者の64%がAI導入によって大幅なコスト削減が見込まれると答え、63%がサービス向上につながると回答していますが、実際にAIを全組織に導入しているのはわずか26%、生成AIの導入に至っては12%にとどまっています。こうした結果は、政府機関がこの格差を埋めるために断固たる措置を講じる必要性を強く示しており、回答者の58%がパブリックセクターはデータとAIの導入を急ピッチで進める必要があると考えています。レポートでは、これを実現するためには、政府機関が技術面と人材面の双方に焦点を当てることが不可欠であると指摘しています。

 

すでにデータ分析やAIを活用している政府機関は、複数の分野で幅広い便益を得ています。具体的には、アクセスの改善や利用者ニーズに合わせたサービスで市民体験の充実、監視体制の強化と業務の効率化、セキュリティの強化と不正行為やミスの減少、職員の生産性と満足度の向上、データを活用し、より多くの情報を参考に意思決定を行う環境の整備などです。レポートでは、先駆的な政府機関がどのように導入の課題を解決しているかを示す実例やユースケースを紹介し、他機関が参考にできる再現可能なモデルを提示しています。

 

変革を先導する「先駆者」たち

今回の調査で、導入の進展だけでなく、戦略的アプローチにおいても他の政府機関をはるかにしのぐ「先駆者」グループがあることが分かりました。調査回答者のうち上位20%がこの先駆者に分類され、デジタルソリューションの導入をさらに進めていました。残り80%は後続組とされています。

 

先駆者は、質の高いデータやデジタルインフラといった強固な基盤を築いてから、高度なAI技術の導入を急ピッチで進めることを戦略的に重視しており、それが他者と差をつける要因となっています。データとデジタルインフラを整備している割合は、先駆者が88%、後続組が58%、既存の業務プロセスやサービスをデジタル化または自動化している割合は、先駆者が76%、後続組が33%です。データ分析能力を構築している割合も、先駆者が58%であるのに対し、後続組は33%にとどまっています。

 

EYは、先駆的な組織からの学びを踏まえ、政府機関が自信を持って自らの変革に取り組めるよう、データとAIの導入を成功に導く包括的な5つの基盤フレームワークを紹介しています。これらのステップは実際に試行・検証されており、政府機関やパブリックセクターにおいて有効であることが実証されています。

さらに本レポートには、15カ国15,000人の市民の意見を収集したEYのAI Sentiment Indexのデータも掲載し、AIを活用した行政サービスに対する市民の期待や懸念を政府機関が把握するうえで役立つインサイトを紹介しています。

 

EY Global Government & Public Sector Digital Modernization LeaderのPermenthri Pillayは次のように述べています。

「初期段階での重点的な取り組みは、より効果的なデジタル基盤とデータ基盤を構築した先駆者たちに成果をもたらしています。中には、クラウド技術を取り入れたデータプラットフォームを構築した組織もあります。先駆的な組織は、特定のチームや部門にとどまらず、組織全体にデータ活用能力を根付かせることで、より迅速に進展を遂げています。これにより、データの質と一貫性を高水準に維持し、組織の縦割り構造を打破するとともに、データガバナンスと規制順守に対する統一的なアプローチを実現しているのです。その結果、拡張性と柔軟性を備えたデータ管理が可能となり、最終的には組織全体に利益をもたらす、より一貫性と整合性の取れた戦略の形成につながっています」

 

AI導入の課題

データ分析とAI・生成AI技術の導入は政府機関にジレンマをもたらしています。こうした技術の潜在的な利点を認識する一方、導入を妨げる重大な課題に直面しているのです。データおよびデジタルソリューションの導入に際して現在組織の能力を制約している課題として、回答者の約3分の2(62%)がデータのプライバシーとセキュリティ面の懸念を、51%がデータトランスフォーメーションとデジタルトランスフォーメーション戦略の欠如を、45%がデータインフラの未整備を挙げています。

 

民間セクターとは異なり、政府機関は法的に保護された膨大な量のデータを保有しています。もともと市民保護を目的として設けられたプライバシー法や法的制約は、必要な枠組みや保護措置が整っていない場合に、公務員が明示的に許可された範囲を超えて行動することを制限するため、データ共有を困難にしています。本レポートで特定された先駆的な組織は、許可権限、アクセス制御、利用制限を明確に定めたデータガバナンスの枠組みを確立するとともに、個人データを保護しつつ分析を可能にする透明性のあるデータ利用方針と手法を構築することで、こうした課題に対処しています。

 

AIの機会をとらえる

リソースの制約や人口動態の変化、複雑な社会問題、高まる市民の期待といった、政府機関が現在直面している前例のない課題に対応するには、変革的なアプローチが求められます。データとAI技術がこれらの課題に対応するために必要な能力をまさに提供できることが調査結果から分かりましたが、それは計画的に導入された場合に限られます。

 

EY Global and EY Asia-Pacific Government & Infrastructure Industry LeaderのCatherine Fridayは次のように述べています。

「深刻な状況です。企業から商品やサービスを購入する際、人々はシームレスな顧客体験をますます期待するようになっています。データとテクノロジーを活用して優れた消費者体験を提供するという点で、政府はすでに民間セクターに後れを取っています。迅速な行動を取らなければ、市民が企業から受けるテクノロジーを活用したサービスと、政府から受けるサービスとの格差がさらに拡大します。その結果、市民の期待に応え、市民の利益にかなうサービスを提供するパブリックセクターの能力に対する懐疑が強まり、政府そのものの有効性への信頼が損なわれるおそれがあります。一方で、こうしたテクノロジーを適切に導入できた政府機関は大きな利益を得ることができます。具体的には、生産性の向上、職員体験の改善、市民サービスの変革、計画立案の高度化、財務管理の強化、レジリエンスの向上などです。これにより市民にとってより良い成果がもたらされ、パブリックセクターが効果的なサービスとプログラムを提供できるという信頼の回復につながります。変化を強く求める有権者に対して前向きな変化を示す必要がある政府にとっても、これは明確な利益となるのです」

 

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 公共・社会インフラセクター ディレクター 横山 武史のコメント:

「近年、世界的にAIの技術革新が進んでおり、日々のニュースやSNSなどでもAIを活用した事例が取り上げられています。私たちの身近な暮らしの中でも、AI技術を活用したサービスを目にする機会が増えてきており、AIは人口減少社会に転じた日本の社会課題解決の切り札となり得るでしょう。

世界各国でも国家戦略としてAI活用を推進してきている中、日本政府においても強い経済実現のための戦略分野としてAI分野が指定されていることや、2025年12月に政府より公表された人工知能基本計画(案)において1兆円規模の民間投資を呼び込む方針を打ち出していることなどからも、AI産業における日本政府の期待の高まりを感じられます。

実際、日本政府は、政府職員が安心・安全にAI技術を活用できる基盤となる『ガバメントAI』の構築を進めており、プロジェクト『源内』という生成AIの環境整備にも着手していることなども念頭に置き、世界の現状や先駆者の事例についてご一読いただければと思います」

 

調査に関するレポートの全文はこちらをご覧ください。

パブリックセクターでデータ分析とAIを活用して、パブリックバリューを高めるには | EY Japan

 

※本ニュースリリースは、2025年6月18日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

英語版ニュースリリース:  https://www.ey.com/en_gl/newsroom/2025/06/ey-survey-reveals-large-gap-between-government-organizations-ai-ambitions-and-reality

 

 

本調査について

調査方法:グローバルなインサイトの収集

2024年8月から9月にかけて、EYはOxford Economics社と共同で、「パブリックセクターがデータとAIを活用してパブリックバリューを高めるにはどうすればいいか」という問いの答えを探るために調査を実施しました。

14カ国の政府機関の幹部492名を対象に調査を行いました。回答者は、最高経営責任者、最高情報責任者、最高データ責任者、最高戦略責任者、最高AI責任者、最高イノベーション責任者、最高執行責任者・業務取締役、最高技術責任者、局長、長官など組織のデータ・AIプログラムに精通しているか、深く関与している高官・幹部です。回答者の構成も、以下のようなさまざまな政府レベルと多様な機能領域を網羅できるよう慎重に設計されました。

 

政府レベル:国家・連邦レベル(40%)、州・県レベル(25%)、地方レベル(25%)、公営・国営企業(10%)

機能領域:行政機関、デジタル庁、内務、経済、財務・税務、保健、社会福祉、教育、エネルギー、規制、防衛・情報、インフラ・交通など。

 

調査で得られた定量的結果を補完し、また背景をより深く掘り下げるため、合わせて46名を対象に詳細なインタビュー(1対1の詳細な聞き取り調査)も実施しています。内訳は、公務員38名、学術・政策専門家4名、AI導入を推進する民間セクターのリーダー4名です。このインタビューで、データとAI導入の成熟度や直面している課題、これらの課題に対応するためのリーディングプラクティスに関するさらなるインサイトを得ることができました。

 

各国の政府機関間での一貫性を確保するため、本調査では以下の定義を使用しました。

データおよびデジタルインフラ:データの保存、処理、通信を支える基盤となるデータ、デジタルシステム、サービス。例:各種公共サービスアプリケーションをホストし、行政部門間の効率的なデータ共有を可能にする政府のクラウドコンピューティングプラットフォーム。

高度なデータ分析:大規模かつ複雑なデータセットを分析してインサイトを導き出し、結果を予測し、意思決定を支援するための高度な手法やツールの活用。例:予測分析を用いて交通パターンを予想し、公共交通機関の運行スケジュールを最適化すること。

 

人工知能(AI):自然言語の理解、パターン認識、問題解決、経験からの学習などのタスクを実行できるシステムの構築に焦点を当てたコンピューターサイエンスの一分野。例:自治体が、問い合わせ対応やサービス案内、住民の要望への応答に活用するインテリジェントチャットボット。市民との関わりの強化やサービスの効率化に寄与する。

 

生成AI:訓練データから学習したパターンに基づいて新規コンテンツ(テキスト、画像、コード、その他のメディア)を生成するAIの一種。多様な領域において、文脈に応じた知識の学習、推論、適用能力を備える。例:医療、教育、交通などのさまざまな政府部門とシームレスに連携し、人間が明示的に指示しなくても自律的に情報に基づいた意思決定を行い、リソースを最適に配分するとともに、新たな法規や社会的ニーズに適応するシステム。

 

調査方法に関する注記:本調査は、参加機関による自己評価に基づいており、一定のバイアスが含まれる可能性があります。これを軽減するため、インタビューの実施や地域間比較分析を通じて、主要な調査結果を相互に検証しました。

 

〈EYについて〉

EYは、クライアント、EYのメンバー、社会、そして地球のために新たな価値を創出するとともに、資本市場における信頼を確立していくことで、より良い社会の構築を目指しています。 データ、AI、および先進テクノロジーの活用により、EYのチームはクライアントが確信を持って未来を形づくるための支援を行い、現在、そして未来における喫緊の課題への解決策を導き出します。 EYのチームの活動領域は、アシュアランス、コンサルティング、税務、ストラテジー、トランザクションの全領域にわたります。蓄積した業界の知見やグローバルに連携したさまざまな分野にわたるネットワーク、多様なエコシステムパートナーに支えられ、150以上の国と地域でサービスを提供しています。

 

All in to shape the future with confidence.

 

EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。EYによる個人情報の取得・利用の方法や、データ保護に関する法令により個人情報の主体が有する権利については、ey.com/privacyをご確認ください。EYのメンバーファームは、現地の法令により禁止されている場合、法務サービスを提供することはありません。EYについて詳しくは、ey.comをご覧ください。

 

本ニュースリリースは、EYのグローバルネットワークのメンバーファームであるEYGM Limitedが発行したもので、顧客サービスは提供していません。


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