【独自】危険な違法わな、市原の山林に複数 標識なく重大事故の危険 挟まれたハンターも【動画あり】

違法に設置されたわな。周辺で同様のものが7基見つかった。県が使用に関する警告を表示した=9日、市原市寺谷
違法に設置されたわな。周辺で同様のものが7基見つかった。県が使用に関する警告を表示した=9日、市原市寺谷
違法に仕掛けられたわな。鳥獣がよく通る傾斜地に巧妙に隠して設置されている=9日、市原市寺谷
違法に仕掛けられたわな。鳥獣がよく通る傾斜地に巧妙に隠して設置されている=9日、市原市寺谷
適法なわなには標識(中央)が表示されている
適法なわなには標識(中央)が表示されている

 市原市内の山林に標識のない危険な狩猟用わなが多数設置され、ハンターが誤ってわなにかかる事故が発生していたことが10日までに分かった。わな設置は県の許可が必要で、交付される標識は事故防止などの観点から鳥獣保護管理法で掲示が定められている。千葉県自然保護課によると、今回のわなは規格も同法に抵触する可能性がある。イノシシが多く出没する地区で、何者かが捕獲を狙った可能性がある。関係者は「人命にかかわる危険な行為」と危惧。ただ、現状で撤去が難しく、県は「県警と情報を共有しながら対応を検討していく」としている。

(佐藤大介)

 設置されていたのはシカやイノシシといった野生動物などを捕獲する、いわゆる「くくりわな」。踏み板を踏むと台座を埋めた穴にはまり、踏み板の外枠が上に稼動してワイヤを跳ね上げる仕組み。設置には県の許可が必要で、設置場所には住所や氏名などを明記した標識を見やすい場所に掲示することが義務付けられている。

 市原市寺谷の山林で狩猟期間に入った11月中旬ごろ、ハンターの男性が標識のないわなを誤って踏み、足を挟まれる事故が発生。幸い狩猟用シューズを履いていたため大事には至らなかったが、周囲を調べたところ計5カ所で無標識のわなを発見。うち一部のわなには鳥やウサギなどがかかっていたという。

 事故に遭ったハンターの知人男性と、通報で駆け付けた県自然保護課の職員が12月9日、改めて現場周辺を調査。さらに二つの無標識のわなが見つかった。同課職員は計七つのわなに警告表示を取り付けた。

 いずれも市販のわなに自作のワイヤなどを取り付けたものとみられる。人間の足も入りそうな大型の穴が掘られ、かかった際にワイヤを緩める金具などが壊れているものも。土などで巧妙に隠され、知識がない人が山に入れば誤って踏む可能性がある。

 ハンター歴が長い市内の50代男性は「こうしたわなは初めて見た。人間が誤って踏んでも抜けられず、山深く携帯電話で救助を求めるのが難しい可能性もある」と重大事故への懸念を示し、「人命にもかかわる危険な行為。われわれが狩猟犬を放すのもちゅうちょするため、本来の狩猟活動にも影響が出ている。対策が必要ではないか」と話す。

 県自然保護課によれば、市内での無標識わなの通報は過去にもあったという。今回は無標識なうえ、わなの輪の直径が法定の12センチを超え、締め付け防止金具も未装着で、いずれも鳥獣管理保護法に抵触。違法と認定されると設置者に罰金などの罰則が科される。

 引き続き悪用される恐れもあり、わなの撤去などの対策は必要だが、設置された土地と、わなそのものの所有者が不明のため撤去は難しいという。同課は所有者の確認などに向け「県警と情報共有しながら対応を検討していく」としている。併せて、鳥獣保護管理員による通常の巡回で違法なわなの設置の確認なども実施していく考え。


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