
「便利な未来の技術なのに」-。幕張メッセ(千葉市美浜区)で20日から始まった「国際ドローン展」。先月、首相官邸のドローン落下事件を皮切りに、各地で事故やトラブルが相次ぎ、製造企業はマイナスイメージを懸念する。法規制が確実な情勢でもあり、利用者側にも、その今後を不安視する声が広がりつつある。
「悪用は、いつか起こることだと思っていた」
ドローンの開発から販売までを手掛ける千葉大発のベンチャー企業「自律制御システム研究所」(野波健蔵社長、千葉市稲毛区)の岩倉大輔取締役(29)はあくまで冷静。「これまでは誰でも操縦でき、悪用されないための措置を取っていなかった。事件をきっかけに、改善策を講じる必要がある」と指摘する。
同社が開発を進めるのは、GPS(衛星利用測位システム)の電波が届かない環境下でも自律飛行が可能な業務用ドローン。災害現場など、人が立ち入りにくい場所での作業などで活躍している。「一連の事件で、ドローンは怖い、危ないというイメージが根付いてしまった。正しく使えば非常に便利な未来の技術であることを分かってほしい」と訴える。
そのうえで、岩倉取締役は「業界内で連携し、パイロットの登録制度や外部から飛行を中断させることのできるコントロール機能など、開発側も悪用されないような工夫を凝らしたい」と今後に向けた課題も認識している。
ドローン導入を検討する企業側には慎重姿勢もうかがえる。都内の不動産会社に勤める松本耕太郎さん(41)=東京都荒川区=は、担当する宅地開発事業にドローンの空撮技術を役立てようと来場。「手軽に空撮できるドローンは、広大な土地の全景を詳細に把握でき、とても魅力的」と話す。
一方で、「誤って事故を起こしたりしないかなど、漠然とした不安はある。また、事件を受けて操縦が免許制になった場合は、パイロットの養成などにコストがかかる。導入のタイミングが難しい」と表情を曇らせた。
◆ドローンを巡る主な出来事と規制の動き
【4月22日】 東京都の首相官邸屋上でドローンが見つかり、装着容器内の砂から微量の放射線が測定された。警視庁は25日、威力業務妨害容疑で福井県小浜市の無職の男(40)を逮捕。動機は原発再稼働反対を訴えるためだったとみている。ドローンは中国製の市販機
【23日】 菅官房長官が事件を踏まえ、今国会中の法規制を検討する考えを示す
【24日】 東京MXテレビ(東京都)報道局の男性社員が、小型ドローンを本社近くの英国大使館の敷地内に落下させていたことが分かった。資料用映像撮影のため飛ばし、強風にあおられて見失った
【24日】 東京都在住の映像作家男性が昨年7月、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の近くの海岸からドローンを飛ばし原子炉建屋などを空撮、動画をインターネットに投稿していたことが分かった
【28日】 東京都が都立の公園と庭園の管理者に園内でのドローンの使用禁止を通知。大阪市も同日までに、市が管理する公園でドローン操縦者を見掛けた場合、やめるように注意する方針を徹底することを各公園事務所に指示
【5月 1日】 広島市中区の平和大通りでのイベント「2015ひろしまフラワーフェスティバル」(3~5日)実行委員会が会場周辺でのドローン使用自粛を呼び掛けた
【6日】 宇都宮市の住宅にドローンが落ちているのを、帰宅した男性会社員が発見し交番に届けた。宇都宮中央署は7日、所有者と名乗り出た近くに住む男性自営業者(77)に返還した。署によると、男性は「初めて操作したが、コントロール不能となった」と話している
【9日】 御開帳の法要行事が行われていた長野市の善光寺境内にドローンが落下。「飛ばす練習をしていたら風にあおられて落ちた」と横浜市の少年(15)が申し出た
【12日】 京都市の上賀茂神社は京都三大祭りの一つ、葵祭(15日)でドローンの境内上空での飛行を許可制にすると発表した
【14日】 国会議事堂近くでドローンを飛ばそうとしていた少年が見つかった。善光寺境内に落下させた少年とみられる
【14日】 「東北六魂祭」(同月30、31日)の会場となる秋田市の穂積志市長が会見で、来場者にドローンの使用自粛を求めた
【15日】 自民党が総務会でドローンの飛行を規制する法案を了承。官邸など国の重要施設の敷地と周辺の上空を飛行禁止区域とし、違反者には1年以下の懲役か50万円以下の罰金を科す法案を総務会で了承。議員立法で今国会中に成立させる見通し
【18日】 三重県の鈴木英敬知事が2016年の主要国首脳会議(サミット)誘致が実現した場合に備え、ドローンの飛行を規制できる条例案の検討を始めたことを明らかにした
※年齢などは当時