法廷で被告の妻と被害女児の母親の2人が涙を流した。千葉地裁で強制わいせつの罪に問われた被告(27)の公判。被害者が申告をしにくい犯罪であるが、裁判員裁判など市民感覚を取り入れた司法改革が進む中、さらに被害者に目を向けた社会と司法システムが望まれる。
判決によると、被告は2007年7月~09年5月、当時8歳と9歳の女児、16歳と14歳の少女4人に対して口を手でふさいで、体を触ったり携帯電話で撮影、無理矢理にキスをした。
公判は、被告の犯行に至るまでの生き様が明らかになるが、被告を取り巻く人の心も映す。
つらい涙は被告の妻。情状証人として法廷に立った。昨年11月に結婚したばかりで、6カ月の女児がいるといい「やり直したい」と肩を落として消え入るような声で答えた。公判で交際中にも犯行が繰り返されたことが明らかになり、傍聴席で嗚咽(おえつ)が漏れた。
もう一人は被害女児の母親。被告と同じ証言台に着くことを拒否したほど嫌悪感をあらわにした。それでも裁判官に促され証言のためにこらえた。傷心の娘を気遣う母の愛は強い。許せない犯行に「(被告は)一生罪を償えることはありません」と厳罰を訴え、悔しさがにじむ涙。深い悲しみが伝わった。
判決は求刑通り懲役5年。裁判官は「卑劣で極めて悪質。刑事責任は重い。被害者の人格をないがしろにした」と指弾。「被害者に与えた恐怖、不安は将来に悪影響を及ぼす。想像するだけで相当の精神的な苦痛は間違いない。今一度考えてほしい」と諭した言葉は重い。
被告は公判で「触ったのは20数件。追いかけ回すのを含めて100件以上やった」と証言。被害者らが流した涙の数は法廷で明らかになっただけでは済まないことが想像できる。
被害女児だけでなく、家族も心に傷を負った。母親は「興味だけで見ないで。いつだれが被害者になるか分からない」とした上で、「告訴状など被害者が声を出すことは大変なことが分かったけど、勇気を出して。被害者が声を出せる社会になってほしい」と訴えた。
被害の声がすぐ出れば、多発犯罪への防犯や早期摘発にもつながる。被害者の人権について見直す司法の流れを、さらに社会全体で考え進めるべきだ。