「子どもの事故ない世の中を見せたい」 遺族に土下座、元佐倉署交通課長が思い語る <八街児童5人死傷事故1年>

「子どもの関わる事故は絶対に防がなければいけない」と語る潮田警部=県警本部
「子どもの関わる事故は絶対に防がなければいけない」と語る潮田警部=県警本部
事故の惨状が残る現場を調べる県警の捜査員=2021年6月28日、八街市八街は
事故の惨状が残る現場を調べる県警の捜査員=2021年6月28日、八街市八街は

 八街市の児童死傷事故から1年がたつのを前に、発生直後の現場指揮にあたった佐倉署の元交通課長、潮田龍馬警部(47)が千葉日報社の取材に応じた。両親に児童の死亡を伝え、崩れ落ちる姿を目の当たりにした警部。交通事故の防止を担当する警察官として自責の念にかられ、悲劇の再発を防ごうと飲酒運転の根絶を訴えてきた。被害児童に「少しでも子どもの交通死亡事故がなくなった世の中を見せる」と誓う。

 「課長、小学生が複数巻き込まれた事故があります。意識がない者もいるみたいです」。1年前の6月28日、県警本部で新型コロナワクチンの職域接種を受けていた潮田警部のもとに、佐倉署員から一報が届いた。

 現場は捜査員や消防隊員、児童の保護者らで混乱を極めていた。「収集がつかないぞ」。慌てる自分を抑え、現場を取り仕切った。現場は県警本部から臨場した応援の捜査員に任せ、警部ら署員は児童5人の身元、搬送先の病院、容体の確認を急いだ。

 同日夜、犠牲になった児童2人の家族に死亡を宣告した。2家族それぞれ同署の別室で待機してもらい、順番に伝えた。1人目の母親は泣き崩れ、気丈を保とうとした父親も遺体と対面すると力なく崩れ落ちた。家族の姿を目の当たりにし、涙がこぼれた。

 「八街は飲酒運転が多いと聞いていた上で事故を発生させた。もっと取り締まりをしていれば防げたかもしれない。この事故は自分のせいだ」。自責の念から、2人目の家族にはひざまずき宣告した。泣き沈む家族を前に土下座し「申し訳ない。事故を未然に防げなくて申し訳ない」と、ひたすら謝るしかなかった。

 「子どもの関わる事故は絶対に防がなければいけない」。事故後、八街市と協力して危険な通学路を一つ一つ点検し、毎晩のように飲酒運転を取り締まった。

 事故から約1カ月後、70代男性の飲酒運転を摘発。男性は飲酒運転を認めたが、呼気検査で検知したアルコールは道交法違反(酒気帯び運転)の基準値以下だった。八街事故に触れて飲酒運転の危険性を伝えると、男性は「あれは運転が下手だから起きた。俺は運転がうまいから酒を飲んでも事故を起こさない。俺はタクシー運転手をしてたんだ」と笑いながら話した。

 被害に遭った児童や家族のことを思うと憤りが込み上げてきた。「あの親御さんの前で同じことが言えるのか」と一喝。だが、男性は舌打ちを繰り返し、反省の色が見られなかった。

 「人ごとと考えている人が一定数いる。交通事故の悲惨さを分かってもらうにはどうしたら良いのか」と思い悩んだ。「定型的なことだけをやっては駄目だ」と考え、従業員の飲酒確認などを行う安全運転管理者の講習で、捜査に支障がない範囲で八街事故について具体的に語ったこともあった。現在は県警交通捜査課で交通鑑識を担当し、絶えず起こる交通事故の現場から事故の原因究明に力を入れる。

 「八街事故を忘れてはいけない。(被害児童に)少しでも子どもの事故がなくなった世の中を見せることで供養になる」と信じ、日々業務に励む。


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