飲酒運転、意識変革を 会社、家族も責任持って 99年東名高速事故遺族訴え 娘2人失った井上さん夫妻 <八街児童死傷事故1カ月>

オンライン取材に応じ、飲酒運転撲滅への思いを語る井上さん夫妻
オンライン取材に応じ、飲酒運転撲滅への思いを語る井上さん夫妻
飲酒運転撲滅のため講演活動を続けてきた井上さん夫妻=2014年12月、千葉市中央区
飲酒運転撲滅のため講演活動を続けてきた井上さん夫妻=2014年12月、千葉市中央区

 私たちが事故に遭った時と変わっていない―。八街市の小学生5人死傷事故発生から1カ月を前に、1999年に東名高速で飲酒運転事故に遭い、娘2人を失った井上保孝さん(71)と郁美さん(52)夫妻=当時、千葉市花見川区在住=が千葉日報社のオンライン取材に応じ、飲酒運転への憤りを口にした。飲酒運転をしない・させない社会の実現に向け、夫妻は運転手だけでなく、雇用者や同僚、さらに千葉県民全体の意識変革が必要と強く訴える。

 八街市の事故から5日後の7月3日。井上さん夫妻は事故現場で献花し、犠牲になった男児2人を悼んだ。ガードレールや歩道はなく、道路整備の不備が問題視された現場。だが、「こうした通学路は全国どこにでもある。根本的な問題は酒を飲んでトラックを運転したこと。私たちが事故に遭った時と変わっていない」。飲酒運転の撲滅を訴え続けてきた夫妻は、悔しさをにじませる。

 99年の事故後、法改正を求める街頭署名や講演活動に注力。2001年には危険運転致死傷罪が刑法に新設され、14年には自動車運転処罰法が施行、危険運転致死傷罪の適用要件を緩和した新たな規定が加えられた。飲酒運転の厳罰化が進んだ。

 社会の目も厳しくなったはずだったのに繰り返された悲劇。「小さい子が犠牲になるのは、もう…」。言葉を詰まらせる夫妻は飲酒運転の根絶へドライバーだけではなく、会社や同僚、家族、さらに県民全体の意識向上が重要だと訴える。

 昼間から酒を飲んでいたとされる今回の運転手の行動を「アルコール依存症に陥っているレベルだと思う」とした上で、依存症の恐れがある人に、専門的な治療を周囲が促す必要があると指摘する。保孝さんは「身内から『加害者を出さない』という意識を持って」と力を込める。

 夫妻はさらに、会社側の責任の重さに言及する。「意識が高い会社もあるが、飲酒検査を実施せず、安全運転管理者も置いていない会社はまだまだある」と危惧。運送業に限らず、不規則な勤務形態の会社は、健診時に飲酒関係の数値が高い社員を指導したり、酒気帯び運転をした社員にアルコール依存症の治療を受けさせたりするなど、医療や生活指導も含めた取り組みの強化を望む。

 アルコールに関する教育の充実も要望する郁美さんは「保健体育の授業などで年齢に応じて定期的に実施して」と訴える。

 こうした対策を実行に移すため、必要だと考えるのは飲酒運転撲滅条例。福岡県では、子ども3人が犠牲になった福岡市の飲酒運転事故を受け、12年に全国初の罰則付き条例を議員発議で制定。基準値(呼気1リットル当たりのアルコール濃度0・15ミリグラム)未満で摘発されず、警告止まりだった場合でも行政指導の対象とするなど踏み込んだ対策を講じている。

 井上夫妻は「ぜひ千葉県でも作ってもらいたい。いろいろな人が関わる必要があり、県内の遺族の方々にも声を掛けていきたい」と活動を続ける。犠牲者をもうこれ以上出さないために。

◇東名高速飲酒運転事故

 1999年11月28日午後3時半ごろ、東京都世田谷区の東名高速道路で発生。乗用車が飲酒運転の大型トラックに追突されて炎上、井上さんの長女、奏子(かなこ)ちゃん=当時(3)=と次女、周子(ちかこ)ちゃん=同(1)=が死亡した。井上さん一家は箱根への家族旅行の帰りだった。運転手の男は業務上過失致死傷と道交法違反の罪で懲役4年が確定した。


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