高齢者、基礎疾患で高リスク 微小飛沫、換気不良で滞留も 【知っておきたい「新型コロナ」】(1)感染経路と症状・治療 国保旭中央病院感染症センター長・古川恵一医師

国保旭中央病院感染症センター長 古川恵一医師
国保旭中央病院感染症センター長 古川恵一医師

 2019年12月、中国で原因不明の肺炎患者が報告され、新型コロナウイルスが原因と判明しました。人から人への感染力が比較的強く、短期間で世界中に広がりました。

 感染経路は主に飛沫(ひまつ)感染と接触感染で、感染者がせきをした時などに出る飛沫の中のウイルスや、手指に付着したウイルスが、鼻の内側にある鼻腔(びくう)や口の中の口腔(こうくう)、咽頭(いんとう)粘膜から侵入して感染します。

 飛沫の飛距離は多くは1メートル以内ですが、時に2メートル近くになります。また、特殊な状況で空気中の微小飛沫(エアロゾル)を吸って感染する可能性があります。ウイルス排出量の多い感染者が強いせきをした時のほか、たんなどを取り出す「気道吸引」、気道確保のための「気管内挿管」、鼻や咽頭から検体を採取する時などにエアロゾルが飛散して、換気不良の狭い室内空間に滞留する場合にリスクがあります。

 感染者や近くの人がマスクをしないで1メートル以内の距離で15分以上会話したり、せきをしている感染者の飛沫を顔面に浴びる状況は「濃厚接触」です。家庭内の二次感染率は15~37%です。

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 飛沫が気道に付着してから発症するまでの期間(潜伏期)は4~5日が多く、14日以内です。無症状の「無症候性感染者」が感染者全体の30~50%います。無症候性感染者も他人に感染を起こしますが、二次感染率は症状のある感染者より低いようです。

 感染者は発症する2日ほど前からウイルスを排出します。軽症や中等症の人では、発症後初期の6日間は気道のウイルス排出量は比較的多く他人に感染させるリスクがありますが、7日から10日以後ではウイルス排出量は低下し、他人に感染させる可能性は低くなります。ただし、重症肺炎患者や免疫不全者では気道のウイルスの排出量はより多く、排出期間もより長いようです。

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 感染後の経過は、81%の人は無症状か軽症の咽頭炎、肺炎が起こりますが、自然治癒します。14%は重症で、低酸素血症と呼吸困難を伴った肺炎が起こります。5%は重篤で呼吸不全、ショック、多臓器不全を合併します。

 高齢者、基礎疾患のある人(糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、悪性腫瘍、慢性肺疾患、慢性腎疾患、肥満、喫煙者など)は感染すると重症になる可能性があります。

 症状は、発熱、せき、咽頭痛、筋肉痛、頭痛、呼吸困難、下痢、嘔吐(おうと)、鼻汁、嗅覚障害、味覚障害、倦怠(けんたい)感などです。

 感染の合併症は、急性呼吸窮迫症候群、呼吸不全、不整脈、心筋障害、ショック、肺血栓塞栓症、脳血管障害、肝障害、腎障害などがあり、多臓器の障害を起こします。感染の診断はPCR検査や抗原検査などを行います。

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 治療は、軽症・中等症の咽頭炎や肺炎などは自然治癒しますので、症状緩和の治療をします。根本的治療法は未確定ですが、重症肺炎患者には抗ウイルス薬、副腎皮質ステロイド剤、血栓予防薬を投与します。呼吸不全に対しては人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を用います。

 致死率は本邦では感染者全体の約1・5%ですが、ウイルス検査をしていない無症候性感染者や軽症発症者を含めるとさらに低い可能性があります。80歳以上では致死率15%という報告があります。

 ◆古川恵一(ふるかわ・けいいち)氏 現・国保旭中央病院感染症センター長。カリフォルニア大学サンフランシスコ校一般内科、感染症科フェロー、ベスイスラエル病院感染症科フェロー聖路加国際病院内科感染症科部長(東京大学感染症内科講師兼任)などを歴任した。1953年生まれ。

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 感染症診療のパイオニア的存在であり、行政と連携して新型コロナに対処する「国保旭中央病院(旭市)」で感染症センター長を務める古川恵一医師が、人々の生活に深刻な影響を及ぼしているウイルスの特徴や予防策について教えてくれた。


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