「信号無視」していたのは… 事故で長男失った夫婦、証拠提供の重要性訴え 「遺族がさらに苦しまないように」

大須賀旭さんがトラックにひかれた国道6号の横断歩道。両親の裕子さんと敦さんは周囲を見渡し「あの日もきょうのような快晴だった。雨だったら車で送っていたのに」と話した=11月21日、柏市北柏台5
大須賀旭さんがトラックにひかれた国道6号の横断歩道。両親の裕子さんと敦さんは周囲を見渡し「あの日もきょうのような快晴だった。雨だったら車で送っていたのに」と話した=11月21日、柏市北柏台5
大須賀旭さん(遺族提供)
大須賀旭さん(遺族提供)

 「信号機は直進を示し、自転車が飛び出してきた」。昨年10月に交通事故で長男を亡くした夫婦は、逮捕された運転手の言葉を受け入れられなかった。数日後、ドライブレコーダーの映像が見つかり、裁判では相手の“信号無視”が認められた。夫婦は「慎重な息子が信号無視をするわけないと信じていた。家族を失った人がさらに苦しまないように事故に遭遇した人は必ず証拠を提供してほしい」と訴える。

 事故は昨年10月23日午前7時15分ごろ、柏市北柏台5の国道6号で起きた。近所に住む大須賀旭(あきら)さん=当時(24)=が通勤のため自転車で北柏駅に向かう途中、横断歩道近くで右から直進して来たトラックにはねられた。

 母の裕子さん(53)と父の敦さん(60)には事故から3時間ほど後に連絡があり、2人はそれぞれの職場から病院に駆け付けた。遺体安置室で対面した旭さんは「けががひどかった」。裕子さんは当時を振り返り「子どもを失い、今でも生きる意味がないと思う時もある」と話す。

 同月26、27日の通夜と葬儀は、2人にとって長男の新たな一面を知る機会になった。勤務先で海外拠点に転勤する候補になっていたと同僚から聞いた。恋人がいたことも事故後に知った。旭さんは資産運用の勉強もしており、祖母には「将来、結婚する時に充てられたら」と打ち明けていた。

 同じ頃、県警には事故時の状況が記録されたドライブレコーダーの映像が目撃者から提出された。トラックを運転していた50代女性は当初、県警の調べに「自転車が飛び出してきた」と供述。本紙は県警への取材に基づき、女性の供述内容を含めた事故の記事を掲載した。

 記事を読んだ目撃者は女性の供述に疑問を抱き映像を提供したといい、映像により他の車が赤信号で止まる一方、女性のトラックは停止線を通過し、横断歩道の方へ走行していたことが分かった。

 「なぜ事故が起きたのか」「なぜ息子は死ななければならなかったのか」。地裁松戸支部で今年6~11月に開かれた裁判では、運転手の女性が赤信号を見落としたと認められ、禁錮3年、執行猶予4年の判決が出た。真相を知るために被害者参加制度を使い被告人質問にも立ったが、女性の説明は「一つ先にある信号機を見ていた」。2人にとって納得できる答えではなかった。

 事故の1カ月前には3人で応援する歌手、三浦大知さんの公演に招待してくれた旭さんは「やんちゃだけどとても優しかった」(裕子さん)。亡くなる前日、旭さんは恋人とデートをして友人との飲み会に参加していた。裕子さんは「前日はすごい幸せな1日だった」と目に涙を浮かべる。

 ドライブレコーダー映像や目撃者の証言などから、旭さんに落ち度がなかったことが判明した。「状況次第で故人の名誉が傷つくこともある。もっと悔しい思いをしている遺族もいるはず」。長男を失った事故から1年余り。2人は「映像がなかったら、どうなるか分からなかった」と情報提供の重要さを訴えた。

 (報道部・渡辺翔太、安西李姫)


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