台風15号 八街・広範囲で断水 背景に地域特有の事情 危機管理の甘さも露呈 【ちば最前線】

停電の影響で自宅で水が出なくなった多くの市民が給水に訪れた=9月14日午前10時40分ごろ、八街市役所
停電の影響で自宅で水が出なくなった多くの市民が給水に訪れた=9月14日午前10時40分ごろ、八街市役所

 9日未明に本県を直撃した台風15号。記録的な暴風は、記者が担当する取材エリアでも多くの被害をもたらし、改めて自然災害の恐ろしさを思い知った。中でも八街市は、全域の約3万2千世帯が停電となったことに加え、住民の約半数が利用している井戸水の使用不能からくる断水のダブルパンチの状態が長く続き、より一層住民を疲弊させた。

 市民生活に大きな影響を及ぼす停電と断水。市内の停電が解消まで2週間余りと長期にわたったのは、多数の倒木が原因。市が把握した電線などに絡んだ倒木は、南部地区を中心に345本。記者も電線にもたれた倒木を切る作業に立ち会ったが、予想以上に難航した。3、4本分の木を切断して取り除くだけで2時間近くかかる大変な作業だった。

 断水については、市の半数世帯が公の浄水場から水を引いていないため、県が発表する断水自治体に含まれない、いわゆる“隠れ断水”となったが、背景には同市ならではの水事情があった。全国一の生産量を誇る落花生など農業が盛んな八街では、土地柄や農作業への利便性もあり、古くから農家ごとに地下水を引いている世帯が多いという。

 市水道課によると、上水道普及率は、昨年度の実績で市街地や分譲地を中心に約53%(1万4882戸)。これは県の水道統計によると、県内自治体で2番目に低く、残りはおのずと井戸水となる。このため、停電で井戸から水をくみ上げることができなくなり、結果として断水に見舞われた。

 市の水道に限れば、台風による被害はなかったが、同課は「上水道、井戸水とも双方に良い部分はある。大きな地震が発生した時などは、上水道よりも井戸水の方が被害に強いとされる」と説明。実際、記者がかつて担当した香取市では、東日本大震災による液状化現象で地中の水道管が広範囲で破損し、大規模な断水が市民を苦しめた。

 一般に、人間が生きるためには1日に3リットルの水が必要とされる。八街市は今回、災害派遣された自衛隊などによる給水所を市内全域で20カ所以上設置。市役所などでも職員が飲料水を配布し、万全な体制で被災した市民のサポートに徹した。

 一方で、取材を重ねると、市内の小中学校に設置してある受水槽の開放など、緊急時の給水活動に関して、庁舎内でも、住民への情報共有のルールが定められていなかったことが明らかになった。中には、蛇口を回せば簡単に給水できるタイプもあり、「平常時から給水できる場所を広報しておく必要があった」と振り返る市幹部もいた。

 また、危機管理の甘さも露呈。台風通過後に、すぐさま災害対策本部を設置した市役所が、停電などの影響で電話回線がダウン。防災行政無線もバッテリー切れなどで使用不能に。市民に情報を伝達する手段を早々に失った。別の市幹部は「強い台風だという情報はあったが、これほど大きな被害をもたらすとは思わなかった」と漏らす。多くの課題を残した台風15号。より良い市民生活の実現へ教訓としてほしい。

(佐倉市局長・馬場 秀幸)


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