子どもの虫歯ゼロに 地道な努力と熱意 「よだれ」研究でイグ・ノーベル賞 明海大(浦安)渡部茂教授

イグ・ノーベル賞で受賞したトロフィーなどを前に、研究で突き止めた5歳児の唾液量と同じ500ミリリットルのペットボトルを手に取る渡部教授=浦安市の明海大
イグ・ノーベル賞で受賞したトロフィーなどを前に、研究で突き止めた5歳児の唾液量と同じ500ミリリットルのペットボトルを手に取る渡部教授=浦安市の明海大

 人々を笑わせ、考えさせる研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の化学賞に明海大(浦安市)の渡部茂教授が輝いた。日本人13年連続の栄冠となった研究テーマは「よだれ」。5歳児が一日に出す唾液の量はペットボトルと同じ量の500ミリリットルであることを突き止めた。そのユニークな実験方法と研究に至る経緯を聞いた。(市川支局・町香菜美)

 小児歯科医でもある渡部教授。4年もの歳月を費やし、1995年に論文として発表した。

 実験方法が「笑い」を誘う。白飯やリンゴ、クッキーなど6種類の食品を用意。5歳児30人に食べ物をかんで吐き出す実験を繰り返してもらい、食事以外の時間と合わせて「一日に計500ミリリットル」という分泌量の推計値を得た。飲み込んでしまう子どもも数知れず、複雑な回収率の計算の末に結論にたどり着いた。

 歯科医が少なかった時代、子どもの虫歯を減らそうと小児歯科医の道に進んだ。岐阜や北海道の大学で診断と研究を重ね、カナダにも留学。唾液を研究し「唾液は、食事で発生する酸から歯を守ってくれる。予防に重要な存在」と、口腔(こうくう)環境をつかさどる唾液の役割に注目した。

 治療中心から予防の時代へ-。口腔内の環境を調べるため、唾液の量は基本的なデータになる。世界の注目を浴びた論文は、その先駆けになったという。

 治療には子どもとの信頼関係が大切だ。麻酔を注射する際には子どもがまばたきしただけでも謝る。「痛かったら、お巡りさん呼んでもいいからね」と冗談も。論文は、被験者たちから得られたまさに「信頼」のたまものだ。

 イグ・ノーベル授賞式には息子3人も登場。息子たちがバナナを食べて紙コップに出す実験を再現すると会場は爆笑に包まれた。「自分がやる予定だったのに、急きょ息子たちがやってくれた」と家族の仲むつまじさものぞく。

 受賞理由を自分なりに分析すると、「大の大人が5歳の子どもにお願いして、唾液を真剣に集める。その情景が浮かんだのかな」と頬を緩ませる。

 今回、実験道具に使用したものは紙コップ。「研究の対象は身近な生活の中にある。ちょっとしたきっかけと探究心が大切」。子どもの虫歯を減らしたい。その熱意は変わらない。


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