台風増税Wパンチ 被災店主悲鳴、廃業も レジ故障、値札準備できず

台風15号で大きな被害を受けた店内=1日午後2時25分ごろ、館山市船形の白子屋酒店
台風15号で大きな被害を受けた店内=1日午後2時25分ごろ、館山市船形の白子屋酒店

 消費税率が10%に引き上げられた1日、台風15号で甚大な被害を受けた千葉県南部の被災地では、不安の声や悲鳴が相次いだ。館山市の老舗酒店では台風の爪痕が色濃く残る中、店主が注文の対応に追われ、増税を前に廃業したスーパーもある。

 「今まで2千円だったものが39円値上げになった。お年寄りだから、増税が理解できるか…」。館山市船形地区にある1920(大正9)年創業の「白子屋酒店」を営む加藤克美さん(75)は、この日初めてとなる缶ビールの注文を受け、ぽつりとつぶやいた。

 同店では軽減税率に対応できるよう、9月6日に店内のレジや会計処理用のパソコンを更新。清酒やみりん、清涼飲料水などの商品を30項目に分類し、注文に応じて8%か10%かを仕分けるシステムを取り入れ、準備を進めていた。

 しかし、3日後の台風で店舗が被災。築90年以上の木造2階建ては屋根瓦やトタンが吹き飛び、一瞬で水浸しに。14日に停電は解消したものの、パソコンやレジ、プリンターが雨水で故障して使えなくなった。

 被災後も得意先からの注文が続き、しばらくは手書きの伝票で対応。業者に修理を依頼し、先月末までにレジやプリンターが使えるようになった。ただ、現在もパソコンの全面復旧には至っておらず、代替機を通じて売り上げなどを入力する日々が続いている。

 加藤さんは「幸い営業をスタートすることはできたが、本来の業務からはほど遠い。再建費用も保険だけではカバーできず、どのくらい援助が出るのか…」と不安を口にした。

 鋸南町の勝山地区では増税前日の9月30日夕、住民に親しまれてきたスーパー「明石丸」が80年近い歴史にそっと幕を下ろした。

 人口約7700人の同町では、65歳以上が約47%を占め過疎化が進む。店の客足は最盛期の半分に落ち込み、廃業を検討したこともあったが、常連の多くは車の運転ができない高齢者。家族で店を経営する三瓶範子さん(55)は「他に近くの人が歩いて来られるスーパーがなく、なんとか店を続けてきた」と振り返った。

 軽減税率対応のレジは導入済みだったが、8月に70万円をかけて修理したばかりの冷凍庫が台風で壊れ、冷凍食品は廃棄した。1週間近く続いた停電で増税に向けた値札などの準備も進まず、閉店を決意。三瓶さんは「増税が延期にならないかなと期待したけど、仕方がないですよね」と語った。

 「町が寂しくなるんじゃないかと心配だよ」と閉店を惜しむのは、自宅の2階が骨組みだけとなった漁師の茂串至孝さん(69)。避難先から毎日のように家に戻り、1日も片付けに追われていた。「目の前のことで精いっぱい。まだまだ増税のことまで頭が回らないよ」


  • LINEで送る