殺意繰り返し否定 検察側「反感募らせた」 印西・睡眠剤混入事件初公判

 印西市の老人ホーム職員ら睡眠導入剤入り飲み物を飲んだ4人を含む男女6人が交通事故などで死傷した事件で、殺人罪などに問われた元職員で准看護師の波田野愛子被告(72)は、13日に千葉地裁で開かれた裁判員裁判の初公判で、同僚らへの殺意を繰り返し否定した。検察側は被害者らへ一方的に反感を募らせたと動機を指摘。睡眠剤の影響で事故を起こして死傷する可能性の認識が公判の争点になる。

 白髪混じりの短髪にグレーのトレーナー姿。紫色ズボンの裾を折り、オレンジ色サンダルを履いた被告は、ややおぼつかない足取りで証言台に向かった。「無職です」。裁判長に職業を問われると、質問が言い終わらないうちにはっきりと答えた。

 同僚らへの殺意については「ありません」「なかったです」。証言台の椅子に手を掛け体を支えるように立ちながらも、背筋を伸ばし正面を向いて答えた。睡眠剤を飲み物に入れたことは認めたが、殺意については繰り返し否定した。

 冒頭陳述で検察側は、亡くなった同僚職員の山岡恵子さん=当時(60)=らが、将来に備え施設で別の正看護師の採用を考えていたことに対し「退職に追い込まれると疑い反感を募らせた」と動機を指摘。施設を追い出される前に被害者を排除しようと考え、准看護師として睡眠剤の効果や副作用の知識を悪用したと主張した。

 弁護側は、山岡さんに腹を立て「ふらふらさせて、失態をおかせばいいと考えた」と、嫌がらせ目的で睡眠剤を入れたと主張。「交通事故で死亡するとは考えもしなかった」として、睡眠剤と交通事故との因果関係や殺意を否定した。

 山岡さんは昨年2月5日、物損事故を起こした後に施設で仮眠。検察側は「山岡さんに意識障害があったのを知りながら、山岡さんを起こして帰宅を促した」と説明し、弁護側は「ふらつきがなく運転に支障がないと考えた」と主張。さらに、死亡事故は山岡さんの車の前照灯が故障していたことが原因だったとした。

 検察側は、交通事故の鑑定を行った専門家の供述調書を朗読。睡眠剤による昏睡(こんすい)状態により、運転席からずれ落ちた状態で衝突したことが死亡原因とし、通常の居眠り事故とは異なる点を指摘した。

 被告は検察側の証拠調べの間、椅子に深く腰掛け姿勢を崩さず一点を見つめ続けていた。事故現場の状況や、大破した山岡さんの車の写真がモニターに映し出されたが、表情が変わることはなかった。

 14日の第2回公判は、山岡さんの息子や老人ホーム施設長の証人尋問を行う予定。


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