いすみ鉄道、30年ぶり「新卒入社」 東京出身・松木さん ローカル線に魅力 夢の運転士へ第一歩

大多喜駅を出発する列車を見送る松木さん=4月11日午後、大多喜町
大多喜駅を出発する列車を見送る松木さん=4月11日午後、大多喜町
車両の清掃を行う松木さん
車両の清掃を行う松木さん

 房総半島を走るローカル線「いすみ鉄道」(千葉県大多喜町)に今春、30年ぶりに新卒社員が入社した。東京都内の高校を卒業し、同町に移住した松木聖さん(18)だ。物心ついた頃から鉄道が大好きで、念願だった鉄道運転士に向けて第一歩を踏み出した。同鉄道の現在の運転士は10人で51~70歳と高齢化、沿線は過疎化が進む。そんな地域に飛び込んできた若者に地元住民も期待を寄せる。「全国の人にいすみ鉄道に乗ってもらいたい」。夢を膨らませ、日々の業務に励む。

 松木さんは、東京都練馬区出身。生まれて初めて発した言葉が関西の特急電車「はるか」だったほどの鉄道ファンだ。「将来は鉄道に関わる仕事がしたい」と専門的に学べる岩倉高校(東京都台東区)に進学。高卒での就職を目指し、大手鉄道会社の門をたたいたが、新型コロナウイルスの影響などで就職活動は難航した。

 そんな中、高校の先生に勧められ、昨年11月にいすみ鉄道を見学した。アットホームで地域とのつながりが強いローカル線に魅力を感じ、採用試験を経て今年1月に見事内定が決まった。

◆大多喜町に移住

 今の仕事は列車の安全点検や清掃、駅での接客など。上司と毎朝、列車を点検し、車内清掃は1両に1時間かけて丁寧に行う。「人の命を預かる仕事。常に責任を持って取り組んでいる」。既に自覚は十分だ。

 入社に伴って地元東京を離れ、大多喜町の住人になったが、抵抗はなかった。「夜は真っ暗だし、田んぼに囲まれた道を自転車で走る。東京ではなかったこと。驚きの連続」と笑顔を見せ、「地元の人、特に同年代の人と仲良くなりたい」と語る。

◆地元も期待

 同鉄道はこれまで、運転士への転職を希望する人たちに訓練費を負担してもらい、担い手を確保する取り組みなどを行ってきたが、定着しない人も多かった。

 2018年11月に着任した古竹孝一社長(50)は、働き続ける地元出身の新卒社員を探していた。松木さんの採用を決めたのは、「ずっとここに勤める気持ちでいる」という言葉に押されたからだ。

 古竹社長は「ローカル線は地域の血管のようなもの。存続のためには若い世代の力が必要で、地元の人と積極的に交流して地域に根付いてほしい」と願う。

 同鉄道を支援するボランティア団体「いすみ鉄道応援団」の掛須保之団長(60)は、高齢化が深刻な地域に将来の「い鉄」を背負う若者が来てくれたことに、「勇気ある行動を応援したい」と目を細める。

 20歳から取得できる鉄道運転士の国家試験合格に向け、日々の業務や勉強をこなす松木さん。「夢だった鉄道運転士。ここでなると決めている。何十年後も全国の方にいすみ鉄道に乗ってもらい、きれいな景色を楽しんでもらいたい」と将来像を描いている。


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