
子どもを新型コロナウイルス感染症から守るためには、周囲の大人の行動が重要です。感染伝播(でんぱ)力の強いデルタ変異ウイルスの蔓(まん)延により、学校や幼稚園、保育所でのクラスター発生が取りざたされていますが、あくまで子どもの感染の発端となる主たる経路は周囲の大人からです。感染予防行動を大人が改めて徹底するとともに子どもの周囲の大人の新型コロナワクチン接種を進めていくことが重要です。
子どもでは、大人と比較すると確かに新型コロナウイルス感染者は少なく、重症化する率も低いですが、ゼロではありません。デルタ変異ウイルスの蔓延の影響もあり、小児の患者は増えています。全体の感染者数が増えれば、重症者の割合は低くても数として増えてしまいます。また、新型コロナウイルス感染後数週間して起こる小児多系統炎症性症候群(MIS-C)という、さまざまな臓器に炎症を起こす重篤な病態も知られており、患者数の増加に伴い国内でも報告がみられるようになっています。
こうした子どもの感染が本人に及ぼす影響の他に、学校生活などは今もさまざまな制限を受けており、それらが子どもの発達に及ぼす影響も考えなくてはなりません。子どもが感染源になり大人が感染した場合、その大人が重篤化したり、死亡したりすること、またそうしたことが起きてしまった場合に子どもの心に及ぼす影響など、色々なことが考慮される必要があります。
現在、日本国内で新型コロナウイルスワクチンは12歳以上が接種対象となっており、特に10代で接種可能なのはファイザー社およびモデルナ社のmRNAワクチンです。10代の接種について、数千人規模の臨床試験でいずれも成人と同様に高い有効性が確認されています。
副反応としては、アメリカ疾病予防管理センターCDCは、ファイザーワクチンを接種した16~17歳/66350人、12~15歳/62709人の追跡調査結果を発表しています。頻度の高い副反応は接種部位の痛み、疲労感、頭痛、筋肉痛で、大人より少し頻度が高いことが分かっています。発熱は30%ぐらいの人にみられています。これらの副反応は辛い場合には解熱鎮痛剤で対処可能です。
若年者特有の副反応として、心筋炎についても知っておく必要があります。心筋炎は、文字通り心臓の筋肉に炎症が起こる病気です。新型コロナウイルスワクチン接種に伴うものは若い男性に多く、CDCの報告では12~29歳の男性での2回目接種後の頻度は10万人に4人程度とされ、今のところの報告では全例が数週間以内に回復しています。ワクチン接種後数日から1週間の間に、胸痛、息切れ、動悸などがある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
対象年齢となる子どもにも、有効性と副反応についてきちんと理解してもらい、納得の上で接種を希望するようならば接種の機会が与えられるべきだと考えます。