団地見守る「宇宙の夢」 給水塔の巨大壁画(船橋市) 【千葉まちなかアート】

昔ながらの団地内に建つ近未来風デザインの給水塔。不思議な雰囲気が際立つ
昔ながらの団地内に建つ近未来風デザインの給水塔。不思議な雰囲気が際立つ
給水塔には空と宇宙をモチーフにした巨大壁画が描かれている
給水塔には空と宇宙をモチーフにした巨大壁画が描かれている

 船橋市の若松団地の入口近くに強烈なインパクトを放つ給水塔がある。高さ41メートルの正四角柱の壁2面に描かれた、空と宇宙をモチーフにした巨大壁画。昔ながらの団地に、近未来風デザインの塔が溶け込む光景は不可思議としか言いようがない。

 団地を管理する住宅・都市整備公団(現・都市再生機構)の依頼でベルギー人芸術家のクロード・ライール(1937~2007年)が87年に制作。気球、セスナ機、超音速機…と飛行技術が次々と進化し、人類が宇宙へ飛び出すまでを表現。子供たちに大空への夢を育んでほしいという願いが込められている。

 当時を知る若松2丁目自治会の佐藤重雄会長(80)に取材すると、自治会が保管するライール作の下絵を見せてくれた。画中の、手を取り合って宇宙遊泳する飛行士2人。当初の下絵では、それぞれ米国とソ連の国旗のワッペンを付けていたが、作品には描かれなかったという。冷戦終結を願ってのことだが、4年後にソ連の崩壊でそれが「現実」に。平和を希求する芸術家の豊かな想像力を感じさせるエピソードだ。

 ライールは団地の1室に住み込み、約2カ月かけて制作。足場を自力で登り、日本人助手とともに高所をものともせず描いていった。制作中は住民と盛んに触れ合い、帰国後も手紙などで交流は続いたという。

 壁画は団地側の壁に描かれていて、まるで住民を温かく見守っているかのよう。今年34年目を迎える“団地のシンボル”に、佐藤会長は「見るたびに物語が想像でき、飽きることがない。制作の記録も含め、将来に伝承していきたい」と力を込めた。(平口亜土)


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