帰国者受け入れた勝浦市民 “国難”救った英雄に 感染したら…恐怖の毎日 イメージアップも「第3波」打撃【新型コロナ1年ちば】

中国・武漢から政府のチャーター機で帰国し、足取り重くホテルに入る帰国者=1月29日、勝浦市墨名
中国・武漢から政府のチャーター機で帰国し、足取り重くホテルに入る帰国者=1月29日、勝浦市墨名
帰宅する邦人を乗せたバスを横断幕を掲げて見送る市民ら=2月13日、勝浦市墨名
帰宅する邦人を乗せたバスを横断幕を掲げて見送る市民ら=2月13日、勝浦市墨名

 新型コロナウイルスが世界で初めて確認された中国・武漢からの帰国者を受け入れた勝浦市。未知のウイルスとの闘いに挑んだ市民は「国難を救った英雄」と称賛された。あれから間もなく1年。「誰も感染せずに受け入れが終わり、収束すると思ったのに」。第3波の猛威が拡大する中、関係者が当時を振り返った。

 今年1月29日夜、武漢からの帰国者で無症状の191人が「勝浦ホテル三日月」にチェックインした。前日に国から受け入れ要請があり、人道的見地から決断していた。

 「最初の頃は『なぜ受け入れたのか』とホテルに苦情があった」。そう明かすのはホテルの関係者。従業員の業務は、帰国者が過ごす部屋の前に日々の食事(弁当)を配ることがメイン。接触がないため感染の可能性はほぼないが、それでも市民の目は不安に満ちていた。

 転機となったのは2月3日、市内で開かれた医師による説明会だ。「あれで市民の理解が広まった」。この日を境に「“国難”を救ったヒーロー」とエールも届くようになり、「市民の温かさに胸が熱くなった」と今も感謝する。

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 配膳を手伝った市職員も「ホテルに入るのがすごく怖かった」と当時の心境を明かす。「万一、家族に感染したらどうしよう」と不安は拭えず当日を迎えた。だが、ホテル内では国や県から派遣された職員とともに作業。「国の担当者のリーダーシップが素晴らしく、連携がスムーズだった」と振り返る。

 だが、感染の恐怖は常につきまとっていた。ホテルを退出する際に全身に消毒液を吹き掛け、帰宅後は服をすぐ脱いで洗濯。入浴するなどして感染防止策を徹底した。「今となってはいい経験。感染防止への意識も高まった。国難対応に少しは貢献できたかも」とかすかだが、誇りもある。

 邦人がホテルを退出するのに合わせ従業員はPCR検査を受け、全員陰性だった。関係者も市職員も、感染ゼロで乗り切れたことで「これで収束すると思えた」と誰もが思ったが、感染はその後も拡大し、市内の観光や水産業などは大打撃を受けた。

 市によると、昨年の市内観光客は約90万人だったのに対し、今年は9月末で19万人と激減。「勝浦のイメージアップにつながったのに」と肩を落とす。特効薬やワクチンが一日も早く国民のもとに届く日を待ちわびている。


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