日本遺産へ本格始動 20年の認定目指し 鋸山石切場ツタはがし 富津・鋸南 【地方発ワイド】

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日本遺産認定を目指し、鋸山で富津市の任意団体が、絶壁に繁殖するツタはがしを行った=7日
日本遺産認定を目指し、鋸山で富津市の任意団体が、絶壁に繁殖するツタはがしを行った=7日
ロープでぶら下がり繁殖するツタをはがす
ロープでぶら下がり繁殖するツタをはがす
地獄のぞき(奥)がある石切場跡の絶壁で行われたツタはがし=7日、鋸山
地獄のぞき(奥)がある石切場跡の絶壁で行われたツタはがし=7日、鋸山

 日本の近代化を土台から支えた房州石の産地、鋸山(富津市・鋸南町)を日本遺産にする取り組みが進んでいる。富津市の任意団体「金谷ストーンコミュニティー」は7日、雄大な石切場跡の景観を守ろうと、「地獄のぞき」の絶壁に繁殖するツタはがしを行った。両市町は、日本遺産申請に向け今月から協議を本格化し、来年の認定を目指している。

(かずさ支局長・武内博志)

 同団体によると、鋸山では江戸時代中期から房州石と呼ばれる良質な石材が切り出された。幕末以降は台場や横浜港などの建設に広く使われ、各地に石材を供給した鋸山は、近代化する首都圏の歴史を象徴する場所だとされる。切り出しは1985年まで続き、富津市金谷は産地として栄えた。

 2007年に発足した同団体は、こうした房州石にまつわる歴史や石切場跡の実態を解明してきた。昨年11月には約10年間の成果を発表するシンポジウムを開催。来賓としてあいさつした高橋恭市市長は日本遺産への意欲を語り、専門家からは「十分な資格を持っている」との声が上がった。

◆ロープで降下

 機運が高まる一方、石切場跡ではツタの繁殖が進行。このままでは、本県有数の観光名所にもなっている石切場跡の雄大な景観が損なわれる恐れがあり、同団体は日本遺産認定に向け、登山家の協力を得てツタはがしを計画した。

 実施場所は「地獄のぞき」で知られる約80メートルの絶壁。登山家の堤信夫さん(67)と溝渕三郎さん(70)ら3人がロープで降下し、絶壁沿いにぶら下がりながら手やのこぎりでツタを取り除いていった。地上ではボランティアら約20人が作業に協力した。こうしたツタはがしは初の試みで、昨年12月に開催した「房総横断トレイルラン」の参加者募金を活用した。

 同団体の委員長で父の代まで鋸山で石切業を営んでいた鈴木裕士さん(57)は「石を切り出した形跡を将来に残し、鋸山の石切場の大迫力を多くの人に見てもらいたい」と望んだ。

◆国指定化も視野

 富津市は、石切場跡の産業遺産に加え、鋸南町側の日本寺の石仏群や文化財を含めて日本遺産に申請しようと同町に提案。市町を越えて協力することになり、今月14日にはそれぞれの担当課が具体的な方向性を協議する。今後は同団体の調査成果を基に、日本遺産の認定に必要な地域の歴史にまつわる「ストーリー」の内容を検討する。

 日本遺産は文化庁が年1回認定しており、両市町は次回の来年1月ごろの募集に申請し、20年度の認定を目指す。

 また鋸山は「鋸山と羅漢石像群」として県指定名勝になっており、両市町は国指定への昇格も視野に入れる。富津市生涯学習課は「(名勝と日本遺産の)両輪で取り組みたい」としている。

◇日本遺産 地域に根差した文化財の魅力を高め、観光資源に活用してもらうため文化庁が2015年度に認定を始めた。遺跡や寺社、祭りや伝統工芸など、地域の文化財や歴史にまつわる「ストーリー」が認定対象で、地域ブランド力の向上や観光振興を促すことが狙い。現在は67件あり、同庁は東京五輪・パラリンピックが開かれる20年までに100件程度を認定する方針。本県では「北総四都市江戸紀行」(佐倉、成田、香取、銚子市)だけが認定されている。