迷惑動物、食肉で活路 解体施設の整備など課題 夷隅地域の里山荒らすキョン 【地方発ワイド】

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塩こうじに漬けたキョンの焼き肉=御宿町の民間施設
塩こうじに漬けたキョンの焼き肉=御宿町の民間施設
キョンのロースト
キョンのロースト
キョン(千葉県提供)
キョン(千葉県提供)

 里山や農地を荒らす特定外来生物キョン。この迷惑動物を、食肉に活用する取り組みが夷隅地域で始まった。意外にも赤身の肉は高タンパク低カロリーでヘルシー。グルメイベントでは、丁寧な下処理を施してローストや焼き肉、薫製で振る舞われ、口にした人からは予想を超える評価を得ている。ただ食材として流通させるには、解体施設の整備や処理技術の向上など課題も多い。

(勝浦支局・廣田和広)

◆繁殖歯止めかからず

 千葉県自然保護課によると、キョンの県内の推計生息数は2001年度末の約千頭から増加の一途をたどり、17年度末には約3万5900頭に。夷隅地域など県南部に多く生息し、自治体は県と協力し駆除に取り組んでいるものの、繁殖に歯止めはかからない。

 捕獲ペースが上がらない背景には、狩猟者の高齢化に加え、捕獲後の利用法が未確立な点がある。キョンはイノシシに比べ、農業被害額が少ないことも要因だ。

 だが、台湾では高級食材として有名で、角や骨は漢方薬として珍重される。中国では食肉のほか、皮は加工されて楽器などを拭くセーム革として使用、山梨県の伝統工芸品「甲州印伝」の材料にも輸出する。

 こうした価値にいすみ市内で狩猟ツアーを提供する会社社長の石川雄揮さん(41)が着目。市地域おこし協力隊員だった16年に皮を15分で剥ぐ方法を考案して初の国産キョン革を生産。解体も手掛けるようになった。

◆「ローストが一番」

 今夏に御宿町公民館であったキョンの活用法をテーマにした講習会では、元料理人の石川さんが腕を振るい、肉に香草を加えて低温調理し、リンゴとヨーグルト、梅ドレッシングを混ぜた特製ソースを掛けて関係者に提供した。過去のイベントでは薫製も調理したが「ローストが一番おいしい」と勧める。

 同町内の交流施設で今月開かれたイベントでは、塩こうじに漬けたキョンの焼き肉が用意された。主催者の町地域おこし協力隊員、三次恵美子さん(37)によると肉に乳臭さがあるため、下準備が重要だという。さまざまなジビエ料理を味わってきた市川市の会社員、長原陽一さん(35)は「初めてだけど食べやすい」と白米と一緒に頬張っていた。

 キョンは映画「バンビ」のように一見、愛らしい姿が人気だが、日常生活を脅かす存在でもある。関係者らはなんとか食肉としての活路を開き、流通につなげたい-と、期待を込めている。

 石川さんは「丁寧に下処理すれば和食にも使える」と品質に太鼓判を押す一方、高級食材として流通させるには「解体施設の整備と処理技術向上が必要」と指摘している。

◆キョン

 中国南部や台湾に生息するシカ科の草食獣で体高は最大約50センチ、体重はおよそ10キロ。勝浦市内で2001年に閉園した大型観光施設から逃げ出し、野生化して繁殖したとされる。