本の贈り物

■プロフィール
藤原あずみ イラストレーター。1958年長野県安曇野市生まれ。佐倉市在住。主な作品は「野あそびいっぱい 植物編」(萌文社、中山康夫著)、「お話とあそぼう」(一声社、末吉正子著)など。「第18回小さな童話大賞 山本容子賞」、「第9回ミツバチ絵本コンクール佳作」、「第48回千葉文学賞」など受賞。


「ほんものの愛」 『クリスマスの猫』

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 六月の終わり、二匹の猫が我が家の庭にふらりと現われた。大きなオスは白とキジ模様。ほっそりしたメスは真っ黒。仲良く庭のキャットミントを食べ、体をすり寄せ、来た時と同じようにふわっと姿を消した。

 翌日も現れたので餌をやった。猫たちは、毎日、姿を見せるようになった。野良とはいえ無責任な関わり方はできない。避妊・去勢をしようと、友人から捕獲器を借りたのが七月。捕獲できずに夏が去り、メスは子猫を三匹産んだ。猫たちは一家五匹で餌を食べに来た。幸福そうな家族。だが、放っておいたら猫は増え続けるばかり。迷う気持ちを抑え込み、五匹を捕獲した。父猫は去勢。母猫は避妊。子猫たちも保護し、里親探しをした。

 人間のそばで生きる道を選んだ動物は、人間のルールに従わざるを得ない宿命を持つ。だからこそ、飢えたり、傷んだり怯えたりしないように、人間も気遣ってやる義務がある。愛というより義務だと私は思う。関わっているうちに、自然に愛は芽ばえるけれど。

 猫はこちらに積極的に関わってくるわけではないけれど、なぜか、人を動かしてしまうようなところがある。猫たちに振り回されながら、いつもそう思う。

 猫の物語は数多い。ウェストールの『クリスマスの猫』にも、重要な脇役として猫が登場する。舞台は1934年のイギリス。おばあさんが孫娘に語る少女時代の初恋の物語であり、クリスマスの奇跡を起こした猫の物語でもある。

 上流階級の少女、キャロラインは、牧師の叔父さんの家でクリスマス休暇を過ごすことになった。ところが叔父さんは、家政婦のミセス・ブリンドリーに牛耳られていた。牧師館にやって来る貧しい人を、家政婦がみんな追っ払ってしまう。故に、叔父さんの教会はいつもからっぽ。牧師館も氷のように冷えきっていた。キャロラインも家政婦に意地悪をされ、休暇はお先真っ暗。そんな時、貧しい労働者階級のボビーが牧師館の庭に忍び込んできた。キャロラインとボビーは親しくなり、ふたりは厩で身重の猫を世話し始める。猫にこっそり餌を運ぶキャロライン。それを怪しむ家政婦。二人の確執が強まる。現実から目をそらし、自分の殻に閉じこもる叔父さんは、自分の周りで起こっていることに何も気づかない。......

 【メモ】「クリスマスの猫」ウェストール・徳間書店

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