◆現場目線、そして保護者との関わりを大事に
ーー園で力を入れている取り組みや、特色ある活動について教えて下さい
やはり、「荷物のいらない保育園」(園で使う衣服や持ち物一式を園側が用意する)という取り組みに、いちばん力を入れていると思っています。なかなか他の保育園さんではあまり見られない取り組みかなと。
保育園であれば、持ち物が発生したり、持ち帰る物があるのは当然だと思うのですが、私たちは手ぶらで登園できるよう、持ち帰りについても極力ないように、会社としても園としても取り組んでいます。
これは子どもや保護者に寄り添った取り組みであると同時に、実は職員のための取り組みでもあります。荷物がないことで持ち物の入れ間違いがなくなったり、保護者対応のストレスが減ったりと、三者にとってプラスになる、キートスならではの強みだと思っています。
洋服も、いわゆる制服のようなものではなく、家で着ていても違和感のないような、幅広いデザインになっています。子どもたちが、自分で着たい服を選んで着ることもありますよ。
ーー保育士として、そして園長として大切にしている信念は
子どもたちと保護者、両者の最善を考えるよう日々心掛けています。私は子どもが好きで保育士になりましたが、保育士として働く中で、特に保護者との関わりの大切さを感じています。保護者にも寄り添った対応ができるよう、常に意識しています。
園長というと、キートス以外の保育園では事務所で書類整理や別の対応をするイメージが強く、子どもたちと直接関わることは少ないと思われるかもしれません。しかし、私はキートスの園長として、現場に最も近い立場で、先生たちや子どもたちの今の状態をしっかり把握できるような存在でありたいと思っています。保育の中に溶け込み、当たり前のように現場にいることで、先生たちにも良い園長として信頼してもらえるのではないかと考えています。
もちろん自分自身も現場に入りたいという気持ちがあるのですが、何より、先生たちと同じ目線で、共に歩んでいける園長でありたいと思っています。
ーー保護者との関わりを大切にしているとのことでしたが、どんなことを意識されているのでしょうか
保護者の方に寄り添った声かけや対応を意識する場面が多いです。保護者の皆さんは、親子や家族のこと、そしてお仕事のことなど、日々の中でさまざまな悩みを抱えていらっしゃいます。そうした悩みを抱えながら登園し、お迎えに来ている中で、先生たちの一言や関わり方によって、「救われた」「もう少し頑張ろうと思えた」というお声をいただくことがあり、それが園にも届いています。
保護者の方から先生へ感謝の言葉を送ることができる「ありがとうを先生に」という機能があるのですが、それを通じて「自分の関わりや声かけが、ちゃんと保護者に届いていたんだな」と感じることがありました。自分が思っていた以上に、保護者の方が気づき、受け取ってくださっていたんだと実感した出来事でした。そして改めて、「きちんと関わらなければいけないな」と強く思いました。
保護者への関わり方については、特に状況を見ての声かけを大切にしています。実際、お子さんを迎えに来られた保護者の様子がいつもと違っていたときには、私の方から声をかけて、少し個別にお話を伺うこともありました。
ーーなぜそこまで保護者との関わりを大切にされているのでしょうか
保護者の方は、言うまでもなくお子さんと直結しています。だからこそ、保護者が不安定な状態だと、子どもも同じように不安定になってしまう。保護者の方の様子にも目を配り、気にかけることで、結果的に子どもの気持ちや生活のペースが安定することにつながると感じています。すべては「子どものために」という思いに、最終的にはつながっていくと思っています。
◆トイレトレーニングは子どもたちとのタイミングを大切に
ーー保育士の仕事、こんなところが大変というものはありますか
毎日の子どもたちの活動を考えるのは、少し大変だなと感じることがあります。保育士は、「今、子どもたちは何に興味があるのだろう」「何をしたら楽しんでもらえるかな」と、日々の活動を一つひとつ丁寧に考えています。
たとえば制作活動を行う場合でも、「一度で完成できるものにするかどうか」といったところから考えます。同じクラスでも発達の段階には差があるため、たとえばハサミを使う場合には、グループを分けたほうがよいかどうかなど、配慮が必要になります。子どもたちの活動を考えるには、本当にたくさんの要素を見ていく必要があると感じていて、慣れるまでは少し大変でした。
ーー保護者からさまざまな「子育ての悩み」が寄せられるかと思いますが。特に多いもの、またそれに対してのアドバイスがあれば
よくご相談を受けるもので多いのは、トイレトレーニングとイヤイヤ期の二つでしょうか。
特にトイレトレーニングは、子どもや保護者の方によって個人差が大きい部分だと思いますので、あまり焦らずに取り組んでいただけたらと思います。というのも、保護者の気持ちと子どもの気持ちがそろわないと、なかなかうまく進まないんですよね。
保護者の方には、いつでもスタートできるように準備だけしておいていただき、子どもたちのやる気が高まったタイミングで、一緒に進められるといいと思います。ぜひ、お子さんの気持ちやペースを大切にしていただけたらと思います。
◆「保育士向いていない」と感じた時も
ーー園児との忘れられないエピソードはありますか
園長になる以前、保育士として勤務していた園で、「自分は保育士に向いていないのかな」と悩んでいた時期がありました。仕事のことだけが原因ではなかったのですが、うまくいかないことが続いていて…。ちょうど3年目だったこともあり、「後輩の方がしっかりしているな」「自分は向いていないのかもしれない」と思い悩んでいました。別の仕事をしたほうがいいのかな、と考えたこともありました。
そんなある日の夕方、子どもたちと折り紙で遊んでいたときのことです。隣の机で女の子たちがおしゃべりをしていて、ふと「かい先生…」という声が聞こえたんです。何か話しているのかなと思って見てみたら、「かい先生が先生でよかったよね」って言ってくれていて。
その言葉を聞いて、「ああ、自分はやっぱり保育士になりたかったんだよな」と、初心を思い出しました。少し大げさかもしれませんが、「この子たちを見るために保育士になったんだな」「やっぱり保育士になってよかったな」と心から思えた瞬間でした。
ーー今のエピソードともつながってきますが、子どもたちに元気をもらった瞬間はありますか
生活発表会では、クラスごとに演技やダンスを発表します。ある年、お友達と2人で前に出てセリフを言う場面があったのですが、その子は練習のとき、一言も話さず、あまり前に立ちたくなさそうな様子でした。
でも、本番になると、保護者の方が来てくれていたのもあってか、とても大きな声でセリフを言い、ダンスもしっかり披露してくれたんです。本番に強いタイプだったのかもしれませんが、「頑張っているな」「成長しているな」と感じて、胸がいっぱいになりました。私は保護者の方々の後ろで、涙をこらえながら見本のダンスを踊っていました。
◆「パパ・ママに一言アドバイスを!」
千葉日報の連載の中でもいろいろとお話させていただいていますが、子育てや育児の中で悩まれることは、保護者の方にとって本当にさまざまな場面であると思います。ただ、その悩みや責任を保護者の方だけが抱える必要はまったくありません。保育園もその一端を担う存在ですので、どうか保育園にも頼っていただきたいと思っています。抱え込みすぎず、少しでも気持ちが軽くなって、育児を楽しんでいただけたら嬉しいです。





