加太旧市街地と修験道 自然の恵み重視の発想 【黒潮ものがたり 紀伊・房総】(33)

阿字ケ峰の行者堂
阿字ケ峰の行者堂

 和歌山市加太で、淡嶋神社前の旅館・大坂屋ひいなの湯の裏を通る旧市街地を散策しました。両側に白壁の土蔵をコンクリート壁で囲った邸宅、屋根付きの門構えの中、丁寧に剪定(せんてい)された屋敷が並んでいました。昔の長老格を思わせる「利光」「幸前」「小島」などの表札が何軒かあり、今日の繁栄の礎になっているようです。

 まもなく、右側に行者堂に登る阿字ケ峰入り口の碑があり、170段の石段を上ると質素なお堂が残されていました。修験者たちがここで仮寝して、明日からの友ケ島修行の心の準備をしたとのこと。旧市街地には、今でも各地から集まる聖護院修験者を一手に迎える「迎ノ坊(むかえのぼう)」向井家や、一行の参拝を受ける加太春日神社が現存しています。神社の隣には称念寺があり、利光家、幸前家の先祖 ・・・

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