逆境乗り越え最後の夏 ペースメーカーの球児 東金

 「翔太ナイバッチー」。ケース打撃で右中間三塁打を放った東金の内山翔太に、仲間の声が飛んだ。ランナー役ではスクイズで一直線に本塁へ突入、豪快に滑り込んだ。ほかの部員と何ら変わらない、球児の姿だ。

 だが、練習着の首もとを下げると、右胸の上には心臓にペースメーカーを埋め込んだ手術跡が。

 中学の時に受けた心電図検査で、要再検査と言われた。高校2年の春に精密検査を受けると、聞き慣れない病名を宣告された。洞不全症候群-。心臓の調律を発する洞房結節が原因で徐脈を起こす病気だった。

 突然めまいや失神を起こし、2次的な事故に遭う恐れがある。すぐに手術が必要と言われた。1年秋から定位置をつかみ、夏のスタメンもほぼ確定していた-。目の前が真っ暗になった。

 医師からは「手術を受ければ、半年でまた野球ができる」と諭された。約2年4カ月しかない高校野球生活で、半年の離脱はあまりに大きい。だが早く手術を受ければそれだけ早く復帰できる。覚悟を決め、ペースメーカー装着に踏み切った。

 入院中に内山陽介主将に言われた「待ってるからな」の言葉が励みだった。退院後は、グラウンド脇でリハビリの日々。バッティングマシンの球入れや、監督室の掃除も率先してやった。

 年が明けてようやく本格復帰したが、体力不足と心拍数が健常者並になったことで、疲労感は倍増した。「心拍数が(1分間に)16回だった時は、走ってもほとんど疲れなかったのに」。それでも、練習後は自宅で500回の素振り。空白の半年を埋めようと必死になった。

 もともと勝負強かった打撃は健在だった。春の大会前に、再びレギュラーに返り咲いた。


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