「野党はつらいよ」(4)自社さ 自社さ三党連立

1996年1月、政策合意文書に署名後、握手する(左から)武村正義新党さきがけ代表、社会党委員長の村山富市首相、橋本竜太郎自民党総裁=国会

 舌鋒鋭く政権与党を追及すれば「批判ばっかり」「建設的でない」と言われる。ならばと政策提言に力点を置けば「低調な論戦」「迫力不足」とやゆされる始末。まこと野党議員ほど因果な商売はない。フーテンの寅さんだったら「野党はつらいよ」だ。寅さんならば、ずっとさすらってくれていいが、野党はいつまでもふらふらしてたら困る。

 今すぐ政権交代なんて“ぜいたく”は言わない。野党は確かにふがいないが、現状の日本を見れば与党にも合格点を与えられない。野党の奮起で国会にもっと緊張感を与えてくれないかとのささやかな願いである。

 ▽共闘は失敗か?

 では与党に対抗できる野党はどうすれば実現できるか。その鍵は極めて単純、大胆な「妥協」にあると考える。現状では野党第1党の立憲民主党も単独では衆参両院とも過半数獲得は夢のまた夢。差異にこだわらず思い切って妥協することで、他の野党と共通政策を見つけ出し巨大与党に立ち向かうしかすべはない。

 こんなことを唱えると「おまえは昨年10月の衆院選で野党共闘が失敗し、自民党の絶対安定多数を許したのを忘れたのか」とのヤジが飛んできそうだ。だが、本当に失敗だったのか。

 衆院選では全289小選挙区のうち、立民、共産党など野党4党は207選挙区で候補者一本化して与野党一騎打ちの構図をつくった。小選挙区での当選は59人にとどまったが、落選した候補も40人は比例復活当選を果たした。与党系候補と得票率の差がそれほど開かなかったためだ。成功したとは言えないものの、「もし共闘がなかったら野党にはもっと悲惨な結果が待ち受けていた」というのが私の理解だ。与野党候補が接戦を演じた選挙区は総じて投票率も高かった。

 野党間の連携には常に「野合」「数合わせ」の批判も付きまとう。だが、思い起こしてほしい。自民はかつて社民党(当初は旧社会党)、新党さきがけとの自社さ3党連立政権を90年代に組んでいた。政権復帰のため、社民との連立など今なら想像さえできない「裏技」を使ったのだ。

 ▽野合で結構

 野党連携のハードルは高いのは百も承知である。昨年の衆院選で自民大物議員を破り初当選したある保守系野党議員は「自分の当選は共産党を含めた共闘のおかげ」と認めた上で、政権奪取に向けては非共産の中道勢力結集を目指すと語った。政治信条は分からないではない。

 ただ、思想や考え方、立場の違いを乗り越えて課題解決を成し遂げる、これも民主主義の真骨頂だろう。「野合も大いに結構」との気構えで臨んでほしい。「妥協」は政治を前に進めるために必要で決して悪いことではないのだから。(共同通信編集局次長=木下英臣)


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