「弁解不合理反省なし」 地裁判決被告主張を一蹴 地検「適切な判決」 【法廷リポート 野田女児虐待死】

野田市の小4女児虐待死事件で、勇一郎被告の判決が言い渡された千葉地裁の法廷=19日午前、千葉市(代表撮影)(共同)
野田市の小4女児虐待死事件で、勇一郎被告の判決が言い渡された千葉地裁の法廷=19日午前、千葉市(代表撮影)(共同)

 娘を虐待死させ、証人の証言と大きく食い違う供述を繰り返した父親に、懲役16年の判決が言い渡された。昨年1月に野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が自宅浴室で死亡した事件の裁判員裁判。千葉地裁で19日に開かれた判決公判で前田巌裁判長は、傷害致死罪などに問われた勇一郎被告(42)を「心愛さんの人格をおとしめる不合理な弁解に終始し、自らの罪に向き合っておらず、反省は見られない」と指弾した。

 判決は、審理された六つの罪に関する勇一郎被告の供述をいずれも信用性が乏しいと判断し、全ての起訴内容を認めた。前田裁判長は「実際にあった出来事の都合の良い部分のみをつまみ食い的に述べ、事実しか述べていないと強弁している」と批判した。

 昨年1月22~24日、心愛さんが死亡する直前に冷水シャワーを掛け続けたとの指摘について、被告は「額付近に2~3秒間3回掛けた」と供述。判決では、生前に大量の水が口から肺に入った所見があったとする解剖医の証言を採用し、被告の意見を退けた。

 勇一郎被告は心愛さんが倒れてから約10分で110番通報したとも述べていた。しかし、自宅に駆け付けた救急隊員が死後1時間半程度で生じるとされる死後硬直を確認しており、犯行後の対応にも矛盾があったとした。

 一連の虐待が生じた理由を「心愛が暴れたので押さえつけたりした」とする勇一郎被告の説明も否定。心愛さんが暴れたと示す証言はなく、「(被告が説明する)暴れる様子の描写もあいまいで、現実の出来事として全くイメージできない」。心愛さんの母親への暴行に関して、突然暴れたのを制止したという弁明も「脈略がなくあまりに不自然」と一蹴した。

 勇一郎被告は、2017年11月に心愛さんが一時保護される数日前に受けた暴行を「布団を戻す時に抱き上げたりしたことを勘違いしたのでは」とし、無罪を主張。判決は「当時9歳の心愛さんが勘違いするとは考えられない」とした。

 18年7月の強要では、勇一郎被告は排せつ物を自ら持った心愛さんから「撮りたければ撮れよ」と言われたと供述。判決は「強要を実質的に否定している」と非難した。

 被告は初公判で「しつけの範囲を超えており、深く反省している」と謝罪。一方、前田裁判長は「常態化した激しい虐待は
、愛情が裏目に出たというものではない。意固地で独善的な考えと、理不尽な支配欲から絶対的な力の差にものを言わせ、虐待を続けた」と結論付けた。

◆地検「適切な判決」

 千葉地検の清野憲一次席検事は「事実認定及び量刑ともに適切な判決が得られたものと考える」とのコメントを出した。弁護側は報道陣の取材に対して発言を避け、千葉地裁を後にした。地裁によると、19日午後5時時点で控訴は確認されていない。

◆量刑は妥当

 元東京高裁部総括判事の三好幹夫・上智大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話 わが子への長期間にわたる繰り返しの虐待行為で、目を覆いたくなるほどの犯行が明らかにされた。傷害致死事件、児童虐待事件のいずれの視点からみても、類例がないほど悪質な事案といえる。懲役16年は、過去の量刑傾向からすれば重く、でき得る限りのぎりぎりの刑だ。裁判員らはそれに値する事案と捉えたと考えられ、判決は妥当だ。


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