台風15号被害問われる危機管理 関係機関の連携不足も 初動遅れ対応後手

台風15号への対応で批判を受けた森田健作知事(前列右)と県幹部ら=27日、県議会(共同)
台風15号への対応で批判を受けた森田健作知事(前列右)と県幹部ら=27日、県議会(共同)
台風15号で発生した災害ごみの集積所=28日、富津市(共同)
台風15号で発生した災害ごみの集積所=28日、富津市(共同)

 千葉県に大きな被害をもたらした台風15号への関係機関の対応に、批判の声が上がっている。初動が遅れて後手に回り、連携不足も露呈。被害の全容把握もままならず、住民は自力で耐え忍ばざるを得なかった。災害大国での危機管理が問われている。

◆楽観

 台風15号が上陸した9日、県内の多くの市町村が首長をトップとする災害対策本部を立ち上げる中、森田健作知事は終日公舎で待機していた。県が設置したのは10日午前。知事が被災地に初めて足を運んだのは14日で、自民党県議は「リーダーとしてあまりに腰が重い」とあきれる。

 初動の遅れは後々まで影響する。県内では最大で停電約64万戸、断水約8万9千戸に上ったが、対応に追われる市町村に、県が初めて応援職員を派遣したのは12日。県の担当者は「停電が早く解消するだろうと楽観的だった」と弁明する。

 通信網のダウンで防災情報システムに被害状況を入力できない市町村が続発し、把握にも手間取った。森田知事は「混乱の中でいろいろ問題が出てきたということ。誰が悪い、これが悪いではない」と自身への批判をかわすのに必死だ。

 自宅が浸水し、家族6人で車中泊を強いられた山武市の女性(56)は憤る。「県も市も役に立たず、自分の力だけが頼りだった。私たちは不安のまま、取り残された」

◆見送り

 「あれだけの強風だったのに、予想外に被害は少なかった」。政府高官は9日午前、人的被害が少ないことに安堵(あんど)していた。2日後に予定されていた内閣改造を延期すべきだとの声は、官邸内に皆無だった。

 8月の台風10号では上陸前後に2回開いた関係閣僚会議も、8日に検討されながら「各方面の被害予測はそれほど大きくない」との報告が官邸幹部に上がり、見送られた。内閣府が、防災担当相出席の上で関係省庁の実務者会議を開いたのは10日。国土交通省が県内の自治体に派遣した連絡要員も9日は2人で、本腰を入れたのは14日からだった。

 菅義偉官房長官は記者会見で政府の初動対応を問われても「上陸前から迅速、適切に行った」と繰り返した。官邸幹部は「こんなに被害が拡大するとは政府の人間だって誰も予測できなかった」と漏らした。

◆相次ぐ修正

 想定を超える被害を前に、東京電力の停電復旧作業も大幅に遅れた。経済産業省の推定では、千葉県を中心に約2千本の電柱が倒壊・損傷。電線の修理箇所も多く「難工事が重なった」(東京電力パワーグリッドの金子禎則社長)。

 他の大手電力で過去に停電情報の発表が遅れたことを踏まえ、これまでの経験を当てはめて復旧見通しを急いで公表したが、修正を重ねた。倒木が道路をふさぐなどして作業員が現場に近づけず、実態とかけ離れた「過小な想定」(東電パワーグリッド幹部)を繰り返したことが要因だった。

 兵庫県立大大学院の室崎益輝教授(防災計画)は「事前に最大限の警戒態勢を敷くのが大原則。国や県、東電の危機意識の欠如が被害拡大につながったのは明らかで、防災責任者の教育研修を徹底するなどの再発防止策が必須だ」と話した。


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