母の介護、漫画に 葛藤や気付き、ユーモア交え描く 船橋のイラストレーター・野島朋子さん

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母親が作ったレザークラフトバッグを見せながら思い出を語る野島さん。後方にも自慢の作品が並ぶ=船橋市内
「母が若年性アルツハイマーになりました。」。母親に異変が起き始めた一場面

 イラストレーター「Nicco」として活動する野島朋子さん(52)=船橋市=が、若年性アルツハイマーだった母との介護生活を軽いタッチと親しみのある絵柄の漫画で描き、出版した。一昨年4月にみとるまでの間、母が変わる姿を受け入れられなかった葛藤や、介護を通じて学んだ「気付き」などをユーモアを交えて描いた。野島さんは「葛藤や混乱、救われた経験など、多くの人に共感してもらえたら」と話している。

 出版したのは「母が若年性アルツハイマーになりました。」(ペンコム)。60代でアルツハイマーと診断され、その後「要介護5」と認定された母がノン・フィクション・モデル。自宅で母の介護をした父(77)との生活をつづった。

 漫画は「認知症の人と家族の会千葉県支部」の会報に寄せた作品をまとめたもので、母のお別れ会の来場者に配った冊子が出版社の目にとまった。

 レザークラフトが得意で社交的で明るい。そんな「尊敬する母」に、55歳で小さな異変が起こった。62歳になってアルツハイマーと診断。できないことが次々と増えていき、全く別人になる母の姿を受け入れられず、「揺さぶれば我に返って正常に戻る気がした」と思い詰めた。

 母の日には、カーネーションを届けに実家を訪ねると、娘のことが分からず逃げた母。「会いたくない」「どうしたらいいのか分からない」。母のことを考えないようにして、避けていた頃の気持ちも率直に表現した。

 つらい日々が続く介護だが、思わずほっこりするエピソードも。訪問歯科の治療は全力で嫌がり、治療が終わると一転してにっこり。少し前のことを忘れてしまう病気も「こんな時だけは悪くないかな」。野島さんが笑顔で話し掛けても笑ってくれなかった時、父は「身内だって分かっている」と気付かせてくれた。

 母が病気になったことで、父との距離が近くなったという。ワンマンで仕切り屋だった父と野島さんとの“通訳”は母。その母の介護を通して父と分かり合えた。母の死後、父と2人で旅行したことは「お母さんからのプレゼントかも」とひそかに喜んだ。

 漫画を描くことでつらい気持ちがよみがえることもあったが、「病気を通じて学ぶことが多かった」と野島さん。自身も子育てで悩んだ時、出合った本に救われた経験がある。介護の専門用語やデイサービスの利用方法など介護に役立つ情報も盛り込み、“ガイド本”の役割も。「介護へのつらい気持ちも『自分だけではない』と感じてもらえたら」。同じ悩みを抱えた人に、思いを届けたい。

 「母が若年性アルツハイマーになりました。」は全167ページ、1500円(税別)。問い合わせはペンコム(電話)078(914)0391。