「私が一番びっくり」 芥川賞に木更津在住・若竹さん

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第158回芥川賞に決まった若竹千佐子さん

 「信じられない。まさか、ここまでになるとは…。予想以上のことで私が一番びっくりしている」

 第54回文芸賞を史上最年長で受賞し、専業主婦から小説家になった若竹千佐子さん。デビュー作「おらおらでひとりいぐも」が昨秋に出版されると、読者からの感想や増刷に反響を実感した。芥川賞にノミネートされてからは改めて喜びと緊張の日々が続いた。

 「子どもの頃から小説家になりたいと何の根拠もなく思っていた。その延長線上に、こういう晴れがましいことが起きるとは予想しなかった」

 55歳の時、夫に先立たれて悲しみに沈む若竹さんを気遣った長男から小説講座に通うことを勧められた。本格的に取り組み8年、夢は現実に。「何もないところから頭の中のものを文字にしていくことは楽しい。行き詰まった時、こうだと見つけた喜びは何物にも代えがたい。それで続けられた」

 受賞作の主人公は、74歳ひとり暮らしの桃子さん。ある日、自分の内側からあふれ出してきた大勢の「おら」との対話を通して物語は展開する。故郷の東北弁を生かしたリズム感のある文体で孤独や自由といった「老いの境地」を描いた。

 「たくさんの人に読んでもらえて感想が戻ってくるのがうれしい。作者だから私が一番この小説に詳しいと思っていたけど違った。いろんな人がいろんなふうに読み、予想外な感想を言ってくれる。私だけの桃子さんと思っていたのが、みなさんの桃子さんになって広がっている」

 夫は生前、「千佐ちゃんは芥川賞かな、直木賞かな」と小説を書く若竹さんをいつもからかっていたという。亡夫を思い浮かべながら「びっくりして喜んでくれていると思う」とほほ笑んだ。