「命守れるラジオに」 千葉市初コミュニティーFM開局 災害時優先して情報発信 【東日本大震災10年】

1人で生放送を行う押田さん。少人数で効率的に運営しているため、構成作家やタイムキーパーらはいない=千葉市中央区
1人で生放送を行う押田さん。少人数で効率的に運営しているため、構成作家やタイムキーパーらはいない=千葉市中央区
千葉市初のコミュニティーFMを立ち上げた久保田社長
千葉市初のコミュニティーFMを立ち上げた久保田社長

 千葉市初となるコミュニティーFM「SKYWAVE FM」(周波数89.2メガヘルツ)が1月開局した。運営する物流会社の久保田耕司社長(53)は東日本大震災をきっかけに、防災情報をいち早く伝えられるコミュニティーFMの開設を決断。新型コロナウイルスの影響で約半年遅れたが、くしくも震災10年の節目の年に放送が始まった。久保田社長は「ラジオの電波で一人でも多くの命を守りたい」と力を込める。

 久保田社長は大学卒業後、証券会社や宅配会社を経て、2003年11月、物流会社「アクティブレイン」(中央区)を起業。順調に業績を拡大していた11年3月、東日本大震災に遭遇した。自社が入るビルは揺れで「折れるかと思った。空には怪しい雲が広がり、市原方面は爆発事故で空が真っ赤だった」と振り返る。

 「高い確率で起こるとされる南海トラフなど次の大地震では、千葉市でもっと大きな被害が出るかもしれない。防災情報を広く伝える必要がある。最後に残る通信手段はラジオだろう」。東京都内のコミュニティーFMでラジオ番組の制作に約3年半携わった経験があり、市民に身近で小回りが利くコミュニティーFMの開設準備を始めた。

 送信所を高さ約120メートルの千葉ポートサイドタワー(中央区)に設置し、会社の一部をスタジオに改装。ラオックス千葉ポートタウン店(同)や池袋などにサテライトスタジオを設け、中継車も3台準備した。災害に強い電源も確保し「市内が被災しても、防災情報を発信できる体制を整える」と説明する。

 当初は昨年7月の開局予定だったが、新型コロナの影響で試験放送ができる予備免許の取得が遅れ、開局は今年1月に。前日の1月14日、千葉市と協定を結び、災害時に防災行政無線で流す情報を番組で放送することになった。

 パーソナリティーにはアイドルらのほか、地元の市民らも起用する。その一人で、歌手や作詞家などとして活躍する押田じゅんこさんは金曜日の生放送を担当。「新型コロナへの注意を呼び掛けながら、旬の情報を紹介しています」。久保田社長は4月に番組改編を行い、内容をより充実させるつもりだ。

 放送区域は中央区、稲毛区など花見川区を除く市内5区の各一部。しかし、高所から発信される電波は周辺市にも届く。「周辺市とも防災協定を結べれば」と久保田社長。割り振られた周波数は89・2。「語呂合わせで役に立つラジオ。いざというときに役立つ防災情報を伝えるため、日頃から多くの人に聞いてもらえるラジオにしていきたい」と意欲を燃やしている。

◆市も注目、連携強化図る

 千葉市は防災体制の充実を目指し、コミュニティーFM「SKYWAVE FM」との連携強化を図っている。1月の協定締結に続いて、防災行政無線を自動的に同FMの放送に割り込ませるシステムを整備するため、新年度の一般会計当初予算案に600万円を盛り込んだ。

 協定は災害時に市からの要請に基づき、番組内で緊急情報の原稿を読んでもらうことを想定。新年度に整備予定のシステムでは、避難勧告や避難所開設情報など防災行政無線で発信する緊急情報を番組中に割り込ませて流せるようになる。

 市は緊急時、自動的に起動したりチャンネルが同FMに切り替わったりするラジオの配布も検討。同無線の緊急情報を受信するアナログ対応の防災ラジオ約2千台を自治会長らに貸し出しているが、同無線のデジタル化で受信できなくなるためだ。デジタルの受信にはコミュニティーFMが欠かせないという。

 市防災対策課は「ラジオは乾電池で使えるので、停電でも緊急情報を入手できる。防災行政無線が聞き取りづらかったり、インターネットになじみが薄かったりする高齢者に情報を届けるツールとしても有効」と期待している。


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