天然素材求め睦沢移転 都内の革工房 地域密着で受注製作

天然素材にこだわった革製品を作る辻榮さん=睦沢町
天然素材にこだわった革製品を作る辻榮さん=睦沢町

 天然素材にこだわる革製品を製作する「革榮」(かわざかえ)が、都内から睦沢町に移転し、店舗兼工房をオープンした。「土に還(かえ)る」をコンセプトに、革だけでなく糸や接着剤、ろう、金具まで、すべての材料を天然素材でそろえた独特の製法が特徴。辻榮亮代表(41)は「ここまでこだわるのは、おそらく世界でも一人だけ」と胸を張る。

 扱う革は牛を中心にヤギ、鹿、イノシシなど。糸に麻を使用し、接着剤はにかわ、表面に塗るろうを手作りし、メッキしない真ちゅうを金具に使う。バッグや財布、キーホルダーなどが商品に並び、近年はスマホケースが売れ筋。注文を受けて一からデザインするオーダーメードが8割を占めるという。

 天然素材にこだわるのは訳がある。2010年に東京・葛飾区で製作を始めたが、2年後、親しい友人が亡くなり、自分が作った製品をひつぎに入れようとして断られた。「燃え残ったり、有害物質が出る場合がある」。葬儀社から説明を受け「悔しい」と思ったのがきっかけ。

 「自分の考えに共鳴してくれる人に買ってほしい」と辻榮さん。「元々革製品は高価なのに、さらに高い。コアなファンでないと買ってくれないが、付加価値に金を払う人はいる。修理もするし、一生使ってもらえる」と熱く語る。

 こだわりは材料にとどまらず、太陽光発電、地下水に電気自動車と自宅、工房とも生活インフラはすべて自前で完結。睦沢町を移住先に選んだのも、町が民間と協働で地産地消の新電力会社「むつざわエナジー」を設立していたからだ。

 「楽しく近所付き合いができているので、災害時には拠点に使ってもらいたい。永住するつもりだから」。7月12日のオープニングイベントは、あえて町長選挙の日にぶつけた。投票に行った人を対象に製作体験も行った。

 ネットでの注文も受けるが、「来てもらい、直接話を聞ける人を大切にしたい」が基本。新天地で地域に密着した工房を目指している。

 革榮は同町河須ケ谷。(電話)080(5461)9760。


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