養殖魚全滅、船転覆…鋸南の漁業大打撃 被害額「想像できない」 【台風15号】

強風で大きく傾いた漁船=13日午後2時、鋸南町勝山
強風で大きく傾いた漁船=13日午後2時、鋸南町勝山
水を抜き、空っぽになったいけす。停電前は約200匹のタイが泳いでいた=13日午後0時55分、鋸南町勝山
水を抜き、空っぽになったいけす。停電前は約200匹のタイが泳いでいた=13日午後0時55分、鋸南町勝山

 台風15号による深刻な被害が徐々に明らかになった鋸南町。影響は町の活気を支えてきた第一次産業にも及んでいる。特に漁業は漁船が転覆したり、停電で養殖魚が全滅するなど壊滅的。漁再開のめどは立たず、漁業関係者は「被害額は想像できない」とため息を漏らす。

 町役場からほど近い場所にある勝山漁港では、いけすの中のタイやシマアジなど養殖魚約300匹が、停電による酸素ポンプの停止で全滅した。

 養殖魚を管理する勝山漁協活魚センターの鈴木一輝さん(19)=館山市=は台風に備え近くの宿舎に泊まっていたが、あまりの突風で外に出られず。台風が通り過ぎた早朝、いけすをのぞくと酸欠で浮いている無数のタイに絶句した。「停電すると自動で発電機が回るが、2時間しかもたない。助けたかった」

 同漁港から約2・5キロ離れた保田漁港は小型の漁船約15隻が損壊。連日多くの観光客でにぎわう人気の漁協直営食堂「ばんや本館」では、屋根や窓ガラスの損壊に加え、いけすにいた伊勢エビやサザエ200キロ以上が被害を受けた。

 数日後、一部施設の電気は復旧したが、被害が大きく、漁や食堂の再開時期は不明。保田漁協組合の鈴木淳さん(41)は「まずはがれきの掃除。最低1~2週間はこの状況が続くだろう。停電で氷すら作れず、地元の魚屋も困っているのでは」と話す。

 経験したことのない規模の災害だけに被害総額は計り知れない。勝山漁協組合の平島孝一郎組合長は「施設の修理費だけで4~5千万円かかり、定置網は一つ5~6千万円。海中の魚の傷み具合も分からない」と声を落とす。

 悲惨な現状ばかりだが、前を向く漁師たちも。平島組合長は「天災だから仕方ない。漁業者は船と道具さえあれば何とか稼いでいける。ゆっくりと直して、また再起できれば」。海の男の目は輝きを失っていない。


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