自虐ネタ、裏に郷土愛 「絵になる」自然魅力 映画「翔んで埼玉」監督の武内英樹さん(千葉市出身) 【この人に逢いたい ちばの才人たち】

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 「埼玉県民にはそこら辺の草でも食わせておけ!」-。東京にディスられる(=ばかにされる)埼玉の反逆を描いたコメディー映画「翔んで埼玉」が大ヒット上映中だ。笑いのつぼを心得た武内英樹監督は、実は世間が埼玉と比べる千葉の出身。演出のメガホンを容赦なく振るって、劇中で千葉もなぶる。「東京と名の付くものが多い」「地引き網で鍛えた足腰」など自虐ネタ満載も、その裏に郷土愛が透けて見える。

(政経部・加藤凱)

 -原作漫画には千葉が登場しない。

 「原作を読んで、埼玉がうらやましかった。脚光を浴びて、悔しいと。千葉と埼玉は永遠の好敵手。原作は未完で、その先の物語を考えた時、何とか千葉を盛り込みたいと思った」

 「江戸川を挟んで何万もの千葉県民と埼玉県民が対峙(たいじ)するスペクタクルができたら相当バカバカしいコメディーになるのでは。そこから逆算して作話した。すごく受けてよかった」

 -千葉県内での反響は。

 「特に(劇中でこき下ろされる)常磐線沿線の人たちから『いじってくれてありがとう』と喜ばれた。皆の郷土愛を再確認した」

 「埼玉がスポットライトを浴びることはほとんどなく、千葉の優位性を感じていた。デートで埼玉って行かないでしょ? 千葉にはディズニーや海がある。余裕をかましていたが、本作で埼玉の価値が相対的に上がったのでは。次回の都道府県魅力度ランキングで千葉が脅かされる事態になったら…千葉県民の怒りが心配」

 -千葉県内でも撮影した。

 「市原の商業施設でも撮ったし、所沢という設定のシーンは鋸南。千葉はロケに使いやすい。アクアラインを渡るとすぐに自然がいっぱい。房総丘陵の起伏や石切り場も魅力的だ」

 「千葉はロケツーリズムに取り組むといい。映画『テルマエ・ロマエ』も鋸南で撮った。ドラマの撮影にも使われていて、『ビーチボーイズ』では舞台の中心になるセットを館山の漁港に建てて、ファンが来ていた。海のシーンで鴨川、館山、銚子は絵になるし、幕張辺りの海岸線もきれい。千葉は関東の中でも絵になる場所が本当に多い」

 -出身は千葉市。

 「美浜区に住んでいた。就職して東京に出た時はうれしかったが、30歳ぐらいで一度浦安に戻った。やっぱり自然がある方がいい。今は実家が緑区にあり、ゴルフやテニスをするためにしょっちゅう帰るが、街がきれいに整備されていて住みやすいと感じる」

 「埼玉も似ていて、関東の3番手争いを実感しているからこそ、共感を得てヒットしたのではないか」

 -千葉県民にPRを。

 「千葉愛を相当意識しながら撮った。ぜひ千葉の人に見てほしい。千葉への郷土愛を少しでも再認識するきっかけになれば。江戸川のシーンは、千葉を応援しながら見てほしい」

 ◆プロフィル

 たけうち・ひでき 1966年生まれ、千葉市美浜区出身。90年にフジテレビに入社し、「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」「ひとつ屋根の下」「電車男」などのドラマ制作に参加。映画監督として「のだめカンタービレ最終楽章」「テルマエ・ロマエ」などを手掛け、「翔んで埼玉」は公開から2カ月余りで興行収入34億円を突破、267万人を動員するヒット作となった(うち千葉県内2億円、17万人)。