年間5千本幻のワイン 手作業で素朴な味わい  横芝光・斉藤ぶどう園 【ふさの国探宝】

戦前から使われている木製プレス機とれんが造りの醸造庫。プレス機は台上の筒の中に実などを詰めてふたをし、上のレバーを回して絞る仕組み。筒の隙間から出てくる絞り汁を下に置いたバケツなどで受けるという=横芝光町
戦前から使われている木製プレス機とれんが造りの醸造庫。プレス機は台上の筒の中に実などを詰めてふたをし、上のレバーを回して絞る仕組み。筒の隙間から出てくる絞り汁を下に置いたバケツなどで受けるという=横芝光町
絞り汁を発酵させる醸造庫の地下は夏でも20度台に保たれている。10台あるタンクは450リットルの日本酒用で、中には戦前から使われているものもあったりと時代を感じさせる。
絞り汁を発酵させる醸造庫の地下は夏でも20度台に保たれている。10台あるタンクは450リットルの日本酒用で、中には戦前から使われているものもあったりと時代を感じさせる。
自然に優しい農法で栽培されたブドウを材料に、仕込みから瓶のラベル貼りまで全て昔ながらの手作業で生産された今年の新酒
自然に優しい農法で栽培されたブドウを材料に、仕込みから瓶のラベル貼りまで全て昔ながらの手作業で生産された今年の新酒

 戦前から続いているワイナリーが、横芝光町にある。木製の道具や手作業の製法は創業以来の約80年間ほとんど変わっておらず、製品は生産量も年間5千本と希少な「幻のワイン」。今シーズンは11月末の3連休に販売を開始。1年間この日を待ちわびたファンに飛ぶように売れている。
 
  県内では数年前まで「唯一のワイナリー」だったという「斉藤ぶどう園」は、総武本線と国道126号に挟まれた同町横芝の栗山川沿いにある。周辺一帯と近くの坂田城跡にある面積計約1万平方メートルの畑で「デラウェア」「ヤマ・ソーヴィニオン」など何種類ものブドウを栽培。除草剤や化学肥料を使わず、地面で放し飼いのガチョウや鶏に自由に下草など食べさせる自然に優しい農法を展開している。
  
 2代目園主、斉藤貞夫さん(83)によると父、泰次さん(故人)が1930年、当時は松林などだった一帯を開墾し苗木を植えたのが始まり。8年後に醸造免許を取得。やがて訪れた戦時期には酒のほか工業製品として役立てられていた副産物「酒石酸」を軍に納める軍需工場に。戦後もワイン造りは収穫後の恒例行事で近所のブドウ園仲間らと続けたが、自家消費や町内への出荷がほとんどだった。

 本格的に市場投入されたのは2012年だ。「長く商業化・近代化されなかったことで、結果的に昔ながらの製法を伝えてこられた」と話すのは4代目の雅子さん(29)。庭の一角にある作業場を案内してもらうと、ちょっとした時間旅行気分に浸ることができる。

 まず目を引くのは戦前から使い続けている木製プレス機。ブドウを皮や茎ごと上から押しつぶす工程が今も手作業で行われているという。劣らず風情があるのは貞夫さんの幼少期に建てられたれんが造りの醸造庫。絞り汁をホースで地下のタンクへとやはり人力で送り、澱(おり)を沈ませるなどしたら完成だ。

 そうしてできたブドウ酒は酸味や渋味よりも柔らかな果実みが勝った「ライトボディーの辛口」風味。雅子さんは「派手さはないがしみじみうまい、素朴で優しい味わい。きんぴらごぼうや焼きネギ、鴨など家庭料理と合わせてみて」と地元食材を使った温かな食卓をイメージさせてくれる。

 かつてのブドウ園仲間の多くが廃業した今、将来を担う雅子さんは生産量拡大へ「多雨で夜間に気温が下がりづらい」という千葉の風土に合う新たなブドウ品種の開拓に取り組む。十数年以内に生産量を2倍の1万本に、数十年後には3万本に増やすのが目標だ。

 「昔の道具で全て人力でやっているのは国内でも珍しい」と雅子さん。「古くていいものを残しつつ、もっとワインを若い人にも楽しんでもらえるよう頑張りたい」と夢を膨らませる。

◇文・写真  東金支局 堀井研作

◇一口メモ 16日にはイベントも

今年のワインはまず直売で11月末に販売開始。数日で売り切れ、現在は県内外の8酒販店(http://www.saito-winery.com/p/blog-page@7.html)にある。1本1600円(税別)。

 16日午前11時~午後2時には新酒を記念したイベント「ワインマルシェ」がJR横芝駅前の「ヨリドコロ」で開かれ、雅子さん自ら店頭に立つ。試飲ができるほか、36本限定で販売も。また、グラスワインや料理なども楽しめる。問い合わせはヨリドコロ(電話)0479(74)8585へ。


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