消滅可能性都市と南北問題 植林茂 【千葉県内リポート 日銀の目】

 旧聞に属するが、今年5月に公表された日本創生会議の「消滅可能性都市が全自治体の5割」という報告は衝撃的だった。同会議が公表した試算によれば「2040年までの間に20~39歳の女性人口が5割以下に減少する自治体数は896と全体の49・8%にのぼる」というのである。

 この問題は千葉県も例外ではない。首都最寄りでありながら千葉県の消滅可能性都市は4割を超え、関東の中では2番目に高い比率なのである。同比率が高いことは、地理的な特性などを背景に人口の4分の3が県全体の約3割の面積に偏り、残りの約7割の面積には人口の4分の1しかいないという、いわゆる「千葉県南北問題」を別の切り口からみたものとも考えることができる。

 実際、諸会合や調査で県南地域を訪れると、「人口流出が止まらず、駅前商店街がシャッター通り化」「コンビニすら撤退」「高齢で廃業したいが、日銭を当てにする家族がいるので経営を続けざるを得ない」「空き家を更地にすると固定資産税が数倍に跳ね上がるので放置」「電気料金が払えず商店街の街灯を維持できない」といった深刻な話に事欠かない。

 また、商工会議所が自治体などと連携して高齢者向け宅配サービスを始めたところ、売上が伸びないうえ、宅配先が離散していることもあって「予想を上回る大幅赤字になった」例もある。「密度の経済」が成り立たない地域においては、こうした事業を採算に乗せることは至難の業である。

 一方で、地域の暮らしぶりをみると、人口減少が著しい地域でも、道路や水道・ガス・電気といったインフラが整備されているほか、車さえあれば買い物も不自由しない。また、介護サービス等もきめ細かく行われているなど、公共サービス等の充実ぶりも以前とは比較にならない。

 しかし、こうした地域における財・サービスは、供給コストが高く、大都市圏と同じように提供し続けることはさまざまな面で負担が大きい。豊かな生活が当たり前となっているわれわれは、かつての不便な暮らしへの逆戻りを甘受できない者が大多数とみられるだけに、仮に生活水準の低下につながる変化が生じた場合には、人口流出が一段と加速する可能性が高い。

 消滅可能性都市を立て直すために残された時間は多くない。早く抜本的な手を打たなければ、状況は加速度的に悪化していくと考えるのが妥当なように思える。にもかかわらず、意思決定やその前提となる合意形成は困難を極めているのが現状だ。

 抽象的な物言いしかできないが、「フォーワードルッキング(先見的)な視点に基づく経済合理性」と「さまざまな立場の人々への思いやり」とのバランスを取りながら、必要な施策については、痛みを伴うものでも先送りせず決断し、速やかに実行していく以外には道がないように思える。

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 ◇うえばやし・しげる 横浜国大卒、埼玉大大学院・博士(経済学)。1982年日銀入行、山形事務所長などを経て2013年6月から調査統計局主幹・千葉県経済総括。埼玉大客員教授、駒沢大非常勤講師を兼任。


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