本の贈り物

■プロフィール
藤原あずみ イラストレーター。1958年長野県安曇野市生まれ。佐倉市在住。主な作品は「野あそびいっぱい 植物編」(萌文社、中山康夫著)、「お話とあそぼう」(一声社、末吉正子著)など。「第18回小さな童話大賞 山本容子賞」、「第9回ミツバチ絵本コンクール佳作」、「第48回千葉文学賞」など受賞。


「分かち合う」 「マローンおばさん」

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 友人が子猫を拾った。

 茶トラの雄猫で、初めて会った時、そのあまりの小ささに驚いた。鳴きすぎて声がよじれ、子猫特有の青みがかった目には、目やにでフタができていた。かわいいより、かわいそうにという印象の方が強かった。

 友人は慣れた手つきでスポイトを使い、ペースト状の餌を子猫の口に押し込んだ。ふさがった目には目薬を垂らした。懸命な声はじきに甘え声に変わり、静かになったなと思ったら、眠っていた。

 彼女の家には、すでに犬と猫が一匹ずついる。「飼うの?」と聞くと、首を傾げた。「この子はかわいいから、すぐ里親が見つかるはず。引き取り手のない子のために、一匹分の居場所は、いつも空けておきたいの」。

 その一匹分とは、癌(がん)で逝った雄猫の居場所でもあった。彼女の迷いを知るはずもなく「ぼく、ここにきーめた」と、子猫はすっぽりと胸の中に収まり、あくびをした。

 出会いというのは、偶然のようでいて、実は綿密な計画のもとに誰かの手で仕組まれたものではないかと思う時がある。人との出会いもそうだし、大切なものや重要な出来事は、みな偶然を装ってやってくる。けれど、受けとめた時に、その重みで必然だったことを知る。

 しばらくして、彼女は決心した。彼女がというより、子猫が彼女を選んだらしい。

 「毎日、一センチずつ大きくなるの。どんどんかわいくなるよ」。

 電話で報告を受けるたび、子猫のふりまくエネルギーが目に見えるような気がした。

 次に会った時、子猫は別の猫かと思うほど晴れ晴れした顔になっていた。誰かに受けとめてもらう。ただ、それだけのことでこんなに表情が変わるのかと驚いた。愛情は栄養なのだ。体中に行きわたって命を明るくする。そして、分け与えれば与えるほど、どんどんあふれてくる。

 幸福の秘訣(ひけつ)は「分け与える」つまり「分かち合う」ことだろう。分かち合えば、楽しみや喜びは倍になる。そして、哀しみや苦しみは半分になる。分かち合う人が多くなればなるほど、幸福はひろがってゆくだろう。

 『マローンおばさん』は分かち合う愛の物語だ。読むたびに大きな懐に抱かれて、頭をなでられている、そんな気持ちになる。

 マローンおばさんは森のそばで一人貧しく暮らしている。ある年の冬、おばさんのところへ、動物たちがやってくる。最初はみすぼらしい弱ったスズメ。マローンおばさんはスズメを胸に抱いてつぶやく。

 「こんなによごれて、つかれきって。あんたの居場所くらいここにはあるよ」

 やせこけた猫、やつれた母子のキツネ、傷ついたロバ、凍えたクマ。次々とあらわれる動物たちを、おばさんはみんな受け入れる。...

 【メモ】「マローンおばさん」ファージョン作・アーディゾーニ絵・こぐま社

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