本の贈り物

■プロフィール
藤原あずみ イラストレーター。1958年長野県安曇野市生まれ。佐倉市在住。主な作品は「野あそびいっぱい 植物編」(萌文社、中山康夫著)、「お話とあそぼう」(一声社、末吉正子著)など。「第18回小さな童話大賞 山本容子賞」、「第9回ミツバチ絵本コンクール佳作」、「第48回千葉文学賞」など受賞。


「ふれあい」 『さっちゃん』

  • LINEで送る

 保育園の園長先生をしている友人から、CD付きのかわいい絵本が送られてきた。シンガーソングライターのたかはしべんさんの絵本『さっちゃん』。

 自立心が芽生えた主人公のさっちゃんは、ママの言葉に「いいの!」とはっきり言い返す。躾をしようとうるさい大人を、子供が小気味いいほどに拒絶する絵本だ。突き抜けた明るさと何とも言えないあったかみがある。親と子の間に愛情があればこそのやり取り。

 子供はわかっているのだ。「世の中、要求多すぎだよ。これじゃあ、息が詰まっちゃうよ」って。友人が、保育園で『さっちゃん』の読み語りをすると、子供たちは「いいの!」のセリフ部分を待ちかまえていて、声をそろえての大合唱になるそうだ。「さっちゃん、さっちゃん、ごはんにしましょ。さっちゃん、さっちゃん、おててを洗って。あらあらさっちゃん、なんかへんよ。ほっぺにごはんつぶ、くっつけて。なんかへんよ、ちょっとへんよ。『いいの!』」

 二歳児の孫が、やっぱり「いいの!」の連発で親を困らせた時期があった。「でもね、『いやだ』じゃなくて『いいの』って言われると、不思議と『はい、そうですか』って気分になっちゃうんだよね」と娘は苦笑いしていた。計算して使っているわけではないだろうが、言葉の選択の妙に、私も思わず唸ってしまった。『さっちゃん』を孫の所に送った。案の定、お気に入りの一冊になった。

 たかはしべんさんは、日本各地の幼稚園や保育園、こども劇場などでコンサートを開いている。福島や東北の子供たちにも、歌を届けて励ましている。小さいもの、弱いものたちに目を向けた温かい歌詞とメロディ。歌詞に込められた祈りや願いに、どれほど多くの人が勇気づけられていることだろう。本を送ってくれた友人が、たかはしべんさんのコンサートを開いた。『さっちゃん』一曲を聴いただけで、即、企画を立てたという惚れ込みよう。案内を戴き、埼玉まで聴きに行った。もちろん、娘や孫たちも引き連れて。会場には、赤ん坊から大人まで、たくさんの人、人、人。どこで聞いたのか、庭には野良猫まで来ていた。コンサートホールと違って、観客と歌手の距離が限りなく近い。目の前にべんさんがいた。ギターを抱えて、ハーモニカをくわえて。

 【メモ】「さっちゃん」・たかはしべん・たかはしべん音楽事務所

本の贈り物のご意見・ご感想をこちらからお寄せください。
 ・・・

【残り 1121文字】