【千葉魂】ロッテ荻野、神戸の夜空に劇的弾 プロ目指した原点で大仕事

1番打者としてチームを引っ張る荻野。勝負所での一発も光る=ZOZOマリン
1番打者としてチームを引っ張る荻野。勝負所での一発も光る=ZOZOマリン

 首位攻防第3ラウンドは1点ビハインドのまま最終回を迎えていた。9月9日、ほっともっと神戸で行われたバファローズ戦。初戦をサヨナラ負け。2戦目は逆転勝利。そして3戦目も熱戦は続いた。負ければ首位陥落。絶対に落とせないゲームで荻野貴司外野手が魅(み)せた。最終回の先頭打者。マウンドにはバファローズの守護神平野佳寿投手が上がった。初球149キロストレートを見逃しての2球目。138キロフォークをすくい上げると打球は神戸の夜空に吸い込まれるように高く舞い上がり、そしてレフトスタンドに消えていった。起死回生の同点ソロ本塁打。チームの窮地を救った。

 「イメージとしてはセンター前を意識して打席に入っていました。ストレート対応ではあったけど、変化球対応もできるように準備をしていました。フワフワと上がっていたので、捕られてしまうかなあと思いましたが、伸びろと祈りました。風もあって、うまく入ってくれたかなあと思いました」と荻野はその試合を振り返る。

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 ほっともっと神戸は関西学院大時代もリーグ戦で何度もプレーした思い出のスタジアムだ。そしてプロ野球を意識した場所でもある。一つ上の学年に近畿大の大隣憲司投手と立命館大の金刃憲人投手がいた。大学屈指の左腕同士。2006年5月5日に神戸で行われた関西学生リーグ・近畿大対立命館大戦はプロ注目の2人が投げ合うということで多くの観衆とメディアが詰めかけていた。第2試合が関西学院大対同志社大戦。試合に備えてスタンドにいた荻野は目の前で2人の意地と意地の投げ合いを目にした。

 「忘れられない試合です。自分がプロを肌で感じた試合。こういう人たちがプロに1位指名されて入るのかあと見入っていました」(荻野)

 大隣は希望入団枠でホークスに。金刃は同じく希望入団枠でジャイアンツに入団をする。同じリーグで戦う身として刺激を受け、プロを具体的な目標とするキッカケとなった。神戸はそんな原点ともいえる場所である。

 大学時代の荻野にとってターニングポイントとなった出来事と言えば大学ジャパン入りがある。大学時代は遊撃手。しかしジャパンで遊撃手として試合に出場することはなかった。「ボクは代走とか。守ったのもショートではなくてレフトでしたね」と振り返る。日本全国から集まってきた大学球界のスター選手たち。大学ジャパンのプレーを身近に感じ、自分とのレベルの差がはっきりとわかったことで荻野の闘志は火がつき、そこから練習に明け暮れていくことになる。

 「大学ジャパンに来ていた選手たちが本当にすごかった。レベルの違いを感じたし、知らされた。自分はまだまだと思い、悔しい思いもしたし、もっと頑張ろうと思った」と荻野は当時の心境を口にする。そして名門トヨタ自動車に入社後、頭角を現し09年ドラフト1位でマリーンズ入りした。

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 あれから月日は流れた。同じ神戸のスタジアムでも当時と今では立場がまったく違う。プロを少し遠くに見ていた若者は今、マリーンズの切り込み隊長として強い存在感を見せる頼れるベテランだ。前後期制、プレーオフ制を除くと1970年以来となるリーグ優勝を目指すチームを引っ張り、勝利をたぐり寄せている。

 あの日、神戸の夜空に架けたアーチはマリーンズにとってこの上ない希望のアーチとなった。荻野の夢を乗せた一発。この価値ある引き分けの後、続くイーグルス3連戦に同一カード3連勝するなど連勝を伸ばしチームは首位街道をひた走ることになる。背番号「0」と共に歩んだ2021年。歓喜の時まで、泣いても笑ってもあと3勝。10月30日、本拠地千葉で感動のフィナーレを迎えるために荻野は駆け抜ける。

(千葉ロッテマリーンズ広報・梶原紀章)



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