2020夏季千葉県高等学校野球大会 あの瞬間を捉えた写真も多数

【千葉魂】マリーンズは壁を越える 限界突破へ、奮起促す指揮官

ソフトバンクから千葉ロッテにFA移籍した福田(左)の入団会見に同席する井口監督=15日、千葉市美浜区
ソフトバンクから千葉ロッテにFA移籍した福田(左)の入団会見に同席する井口監督=15日、千葉市美浜区

 世間はすでにクリスマス一色となりつつある。指揮官もつかの間のオフに突入した。しかし、やはり野球人・井口資仁は、気付くと悔しい終わり方をしたシーズンを振り返ってしまう。

 最後の1試合。クライマックスシリーズ(CS)に出場する可能性を残した試合で惨敗し、Bクラスに転じた。シーズン終盤。もう一つも落とせない熾烈(しれつ)な日々が続く中で見えたものがあった。結果が要求される乾坤一擲(けんこんいってき)の戦いの中、浮き彫りになった課題があった。

 「みんな、自分の物差しで物事を決め過ぎている。固定観念というのかな。それ以上を自分自身に求めないと成長はない。今年は本当にみんなよく頑張ってくれた。でも、この次は今の自分をもっと超えてほしい。超えたいと思ってほしい。突き抜けてほしい」

 井口監督は愛車を走らせながら、つぶやいた。気分転換に車のハンドルを握り、どこへともなく向かうのが趣味だが、今年のオフ、車内はいつの間にか一年を振り返る空間となっている。

 12月15日もそうだった。午前中にマリンで野球教室。午後から千葉市内にてホークスから加入した福田秀平外野手の入団会見に出席した。そこから鎌ケ谷市のスポーツショップに移動して野球指導を含むイベントに参加した。オフとは思えぬほど相変わらずの多忙なスケジュール。途中、脳裏によぎったのはシーズン終盤に見えたベンチの光景だった。

 「諦めが早いように見えた。ベンチで見ていて、そう見えた選手がいた。マリーンズは、どんな逆境でも最後まで戦い抜くチームでありたい。自分たちにはこれ以上はできないと思うのではなくて、自分たちの可能性を最後まで信じて戦い抜いてほしい」

 だからこそ秋季キャンプでは「限界を超えろ」と口癖のように伝えた。自分たちで己の能力の限界を決めてほしくはない。もっと上へと行けるはず。その想(おも)いだった。もちろん、ただハッパを掛けて終わるつもりはない。だからこそ戦力補強を球団にお願いした。

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 まずイーグルスから美馬学投手を獲得。忘れられない試合があった。指揮官がまだ現役時代だった2013年。マリーンズとのCSファイナルステージでの大一番で三塁も踏ませない好投で完封勝利を挙げた。レギュラーシーズンでは一度も完封勝利はなかったが、大舞台でいつも以上の力を発揮した。その後、日本シリーズでも2勝。シーズン6勝の男がここぞという場面で無類の力を発揮し日本一に導いた。抜群のマウンド度胸と打てるものなら打ってみろと言わんばかりの強気の根性。若手の多いマリーンズ投手陣に注入したい部分だ。

 もう一人。常勝軍団のホークスからは福田秀平外野手が入団した。自ら電話で「頼む」と呼び掛け、獲得にこぎつけた。優勝が義務付けられているホークスで戦ってきた男だからこそ知る勝利への執念と高い志を優しい面構えの若者が生み出すプレーの数々から感じ取った。彼の加入がマリーンズに強い刺激と活気をもたらすと確信した。

 「2人の加入は大きい。活性化する。競争も激しくなる。チームとしても限界を突破していくにはFAでの2人や新外国人、新人を含めた新戦力の力が必要。組織としても限界を決めず高みを目指せる土台が見えた」と積極的に進む補強に満足そうな表情を浮かべる。

 来年の春季キャンプの構想も練っている。優勝をするための練習を意識し、求める。「来年は3年目。選手に求めるのは当然、高くなる。内容も濃くなる」。多少のミスがあっても大目に見てきた過去2年から一転。細かいプレーを徹底的に磨く。おのずとサインプレーの練習も増える。エンドランなどの動く野球でさらなる進化を求めていく。

 指揮官としての反省もある。「1年目にあれだけ走ったのに今年は走れなかった。もっと足を絡ませて、長打だけではなくヒット1本で1点を取る野球をしないといけない。足で相手を崩す」。本拠地球場の外野が狭くなかったことで長打は大幅に増えた一方で、掲げていたはずの機動力が激減した。昨年、124盗塁を記録したチームは今年75個まで減少。マリーンズの戦いが迷走した。来年は走って点を取る野球を見直しながら打線の厚みをつくっていく。

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 クルマのアクセルを踏みながら見える師走の街並みはどこかせわしない。今オフ、野球振興を目的に日本全国を動き回った指揮官もしばし体と心を休める日々に入る。年末は実家で家族と年越しそばを食べながらゆっくりと過ごす。そして年が明けると地元の神社に恒例の初もうでに行く。何を願うか。答えは明快だ。「家族の健康とチームの勝利、両方を願う。チームが勝たないとみんなが幸せになれない。勝つことでみんなを喜ばせたい」。年内の公的な行事を12月15日の夕刻をもって終えた指揮官は愛車のスポーツカーに飛び乗ると颯爽(さっそう)と走り去っていった。

 壁を突き破るための戦いは年が明ければすぐに始まる。立ちはだかるさまざまな困難を全員野球で一つ一つ突破し、そのタクトで悲願の優勝へとチームを導く。限界突破と向き合う新たなる一年が幕を開ける。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)



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