いのちの時間2 第4話(中) 作・相羽亜季実

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 ひかりは左腕にはめている視覚障碍者用の時計に触れた。ガラスケースを開け、針に直接触れることで時間を知ることができる。午後八時だった。

「良夫さん、明日煮る豆ですけど、もうお水に漬けちゃっていいですよね」

 店内用のサンダルに足を入れ、カウンターに向かって言った。恥ずかしさを隠そうとして、いつもより声が上ずってしまう。

「良夫さん?」

 返事がない。トイレにでも入っているのかと、拍子抜けした。しかし、次の瞬間ひかりの耳に、 ・・・

【残り 2033文字】



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