カスハラで精神疾患、会社提訴 従業員妻「組織的な対応せず」

 客が従業員らに理不尽な要求を迫るカスタマーハラスメント(カスハラ)により夫が精神疾患になったのは会社が組織的な対応をしなかったためだとして、農業機械販売会社に勤めていた男性の妻が23日、同社に損害賠償を求め宇都宮地裁に提訴した。男性は昨年、別の病気で亡くなった。

 提訴したのは栃木県さくら市の藤田深雪さん(70)。訴状によると、亡くなった夫の和明さん=当時(72)=が「エム・エス・ケー農業機械」(北海道恵庭市)の栃木営業所長だった2006年、取引先から納品などを巡り退職届を出すよう迫られた。その後も激しい叱責などが続いたが、上司らは「おまえ1人でやれ。警察や弁護士に相談するな」と指示。従業員の心身の健康を損なわないよう注意する義務に違反したとしている。

 和明さんは精神疾患で同年に休職し、08年に休業補償金の給付が決定。退職後も治療を続けていた23年にがんが見つかり、後遺症認定を受け労災一時金が支給された。

 エム・エス・ケー社は「訴状を確認し、内容を検討して適切に対応する」とコメントした。


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